********************************************************************
日本脱藩のすすめ 第21号
『マンガ論』
1999/02/09
********************************************************************
1月30日に配布した『平成幕末を襲うユーロ発足の大津波』(財界にっぽ
ん '99.2)について、感想メールを脱藩道場宛てにお願いしますと読者の皆
さんに呼びかけましたが、残念ながら、結果は一通だけでした。ユーロ、国際
経済といった馴染みのないテーマだったからなのでしょうか?
同時に、つくづく思うのは、前号でも紹介した、某識者が語った次の言葉で
す。
「日本人はまとまった意見の発表が下手で、訓練不足であるのは、良い文章
で構成された古典的文章を読みなれていないことが原因で、その一因にマンガ
の影響があると思います。」
そこで、今回は要因の一つと思われるマンガについて取りあげてみます。
脱藩道場では、昨年の12月9日にメールマガジン【日本脱藩のすすめ】臨
時増刊号として「亡国の兆し」を流しました。(ホームページ【日本脱藩のす
すめ】にも掲載してあります。)
http://www01.u-page.so-net.ne.jp/rb3/nobuo-km/fujiwara/article/ dec
line.html
そして、読者に意見や感想を求めると同時に、メーリングリスト【日本脱藩
のすすめ】(脱藩ML)のメンバーにも感想を求めました。読者からのメール
は僅かでしたが、脱藩MLでは大いに議論が盛り上がりました。特に起業家の
Nさんと会社員のFさんとの間で交わされた話は見応えがあり、いずれ編集し
て読者の皆さんに披露したいと思います。
意外なことに、同時に盛り上がったのが、同じ「亡国の兆し」から派生した
「マンガ(漫画)」についてのテーマでした。
そこで、今回は、マンガを巡って、どのような議論が交わされたのか見てみ
ましょう。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
『亡国の兆し』からの抜粋
藤原肇:「いつ来ても日本人は全員が疲れ切ってるみたいで、背筋がシャンと
している人間がほとんど居ない。それに若い連中がそろいもそろって電車の中
で、子供向け漫画やカストリ雑誌を臆面もなく拡げて熱中している様はなんだ
い。思わず赤面させられたよ」
藤原さんの友人(ジャーナリス):「そうか」
藤原:「国民全体がだらしないって感じだな。まるで旧植民地のエジプトやパ
キスタンと云うか、横光利一の戦前の小説「上海」に迷いこんだと思ったほど
だ。それに漫画も穢い絵ばかりだ」
友人:「マンガか、あれは大学生とサラリーマン達だよ」
藤原:「でも寝室でならとも角、公共の場所であんなものを拡げるセンスはど
ういう事だい」
友人:「劇画世代というんだ。六○年アンポ以来の風潮で、青年が方向感覚で
も悲観したものじゃないよ」
藤原:「どうしてだね。恥を知ってた日本人から恥を引けば背広を着たケダモ
ノと大差ないと僕は思うが」
==================================================
漫画に関してですが、一顧だに価しない漫画も多いと思います。しかし、手塚
作品しかり、哲学の領域まで踏み込んだ作品の存在も大きいと思います。
だから、表面的には藤原さんの意見には反対です。
しかしながら、彼の言いたいことは、publicとそうでないものの違いがあいま
いな日本の状況に対してのレトリックではないかと私は理解しています。
(会社員 Hさん)
-----------------------------------------------------------
漫画が悪いものだなんてちっとも思わないですし、個人的には、日本人として
世界に誇れるものだと思っています。
創造力がなくなるって話もありますが、本読まないよりはいいですし、単純に
漫画はとにかく熱い。
それで、正義感や・友情・優しさを学びましたし、私の周りに限って言うなら
、漫画を読まない人は夢を持ってないとすら思っています。
そもそも理想を持って熱く生きようと思うやつの発想、その発想が漫画的だな
ぁ〜という感じです。
そして、世界にどんどん輸出された日本の漫画で育った若者が漫画的発想で結
ばれた時、言葉や文化の壁すら乗り越えられる共通の何かがあるかも、なんて
期待すらしています。(起業家 Yさん)
-----------------------------------------------------------
昼の弁当のおかずの貧困を補うために、漫画をおかずにしています。まあ、い
わば栄養素の一種かも知れません。もちろん無原則にすべて栄養になるわけで
はない。毒もありますが。
私は藤原さんが指摘するほど漫画も捨てたものでは、ないにしても、基本的に
は、自己の精神のあり方として藤原さんの意見を是とすべきと思います。(公
務員 Hさん)
-----------------------------------------------------------
やはり、漫画は支配者側の統治の一環として愚民化政策の一翼を担っている側
面があると思います。
藤原さんが帰国して、電車で漫画を読みふけっている人をみるにつれ、まさに
そういった実態を見せつけられる気分になると思います。
藤原さんの意識の一つとして、本当によい意味でのエリート主義のようなもの
があり、はっきり言って人類は皆同じという認識ではないように思います。
同じ人類であるのは勿論ですが、その同胞との違いを意識し、自己の領域を確
立していくことを追求すべきということでしょう。
そういった姿勢からすると、繰り返しになりますが、漫画を読みふけるサラリ
ーマン像は、愚民の典型ともなりますね。漫画を読む、読まないよりも、この
ような点を認識しているどうかが藤原さんの言いたいことだと思います。
藤原さんが常に言う、「やるべきでないことは、やらない」という姿勢が、大
切です。(読者 Kさん)
-----------------------------------------------------------
現状認識として以下の4点があります。(簡潔に書いてあります)
(1)マンガを批判するのは非常に容易である。活字のほうが知的であるとい
う見解も広く社会に受け入れられやすい。
(2)マンガは、日本社会に完全に溶け込んでいる。
(3)活字もマンガもそれぞれ質の高いものと低いものがある。
(4)日本のマンガは海外で高い評価を現実に受けている。
まず、僕はマンガをよみます。
小林よしのりの「戦争論」から「東京大学物語」(ちょっとHなマンガ)まで
。
僕は、マンガを日本の誇るべき文化だと思っています。
いうならば、ネオ・ジャパニーズ・カルチャーだと。
まず、マンガが日本で発達した最も大きな理由として、電車で通う社会(特に
行き、帰りは友人とかと帰宅)だと思っています。
若い間に高校や大学に通うときに、マンガに親しみ、そのままビジネスマンに
なってもその延長上で読みつづける。これほど、多くの国民が電車通学・通勤
するのも珍しいのではないかと思っています。
つまり、需要はあるわけです。しかし、どうやって質を維持するのか。
実は、マンガを書くほうも競争させていたのです。
例えば、「週間少年ジャンプ」等では創刊当時から新人登用にも力を入れてき
た。
例えば、新人賞などをつくったり原稿の持ち込みを歓迎したり・・。
(日経ビジネス1998年6月29日号、参照)
いいものは新人でも掲載し、それがまた新人の持ち込みを促し、という相乗効
果を生み、登場人物が個性的であったり、物語に奥行きが無ければ生き残れな
い仕組みをつくった。
話はそれましたが、日本が今まったく疑わずに誇っている自動車や家電と同じ
仕組みであったです。よく、自動車は規制に守られいたといいますが、大手メ
ーカーのもとで、その下請けの部品メーカーは熾烈な競争にさらされていたと
いう現実があります。
だから、日本の自動車は、競争力を維持したのです。(おおざっぱな議論です
が・
・)つまり、需要はあり、それにこたえるために供給側も熾烈に競争して、マ
ーケットを獲得しようとしたのです。
では、なぜ僕がマンガをネオ・ジャパニーズ・カルチャーであり、誇るべき文
化だと考えるのか。
それは、上記の現状認識の(2)日本社会に溶け込んでいる、(4)海外の評
価が高い、ということに起因しています。
僕は活字文化を全く否定するつもりはありません。しかし、これほどマンガが
日本社会に深く浸透し、またそれが海外に輸出されている現実を見て、いまさ
ら日本は知的に退廃したや活字文化を取り戻せなどというのは、少々現実逃避
しているのではないかと思っています。
現実は現実として受け入れ、それをどう改善していくかは大切だと思っていま
す。
自動車や家電の次に日本が誇れるものは、それが世界的に認知されているもの
になるでしょう。それが、マンガであり、ゲームであり、アニメであります。
ネオ・ジャパニーズ・カルチャーとして、その存在を認めてもいいと思うのは
、それは「ソフト」だからです。ハードばかりで、日本は自らソフトを創る能
力がないのではないか批判する人もいますが、そうではないと思います。
決して、製造業などのハードの力をunder estimateしているわけではないので
、念のため。
エンターテイメントとしてのソフトづくりの能力があることはとても喜ばしい
事です。
また違う視点ですが、奥行きのあるマンガ(絵柄)をかくためには、筆先の器用
さなどが要求されてくると思います。それは、日本人の雪舟や柿右衛門などの
精緻な筆使いも、非常に深い底流で関係しているのではないかとも思っていま
す。
(どなたか、研究してください。雪舟と現代マンガ文化の相関関係について)
とまあ、いろいろ話がそれましたが、マンガは誰がどう批判しようが新しい日
本文化(広義の意味で)として受け入れるべきだと思います。竜安寺石庭や武
士道は、日本のこころであることは間違いないことだと思います。しかし、現
代の若者、21世紀を生きる多くの者にその「こころ」がわかりにくいものに
なってきているのならば、 それを『伝わる形で伝える』ことが必要であり
重要だと思います。
日本を想い、日本の若者などへのメッセージをもち、切磋琢磨していくために
は、『彼らの言葉』で語らなくてはいけないと思います。そのためには、今の
若者がどういうマンガをおもしろいと思い、どういうメンタリティーをもって
いるのかを知る必要があります。僕は、そういう意識でもマンガを読んでいま
す。
可能であるならば、彼らに伝わりやすいマンガを提供できたらと思っています
。
別に自分が、マンガを書く必要はなく、「原作」、「ストーリー」を担当すれ
ばいいのです。
僕はあらゆることを「日本と世界の在り方」という視点で捉えようとしていま
す。
それが、僕のコアであるからです。
僕は、「国家(日本)」というパンドラの箱を開けてしまったのです。
もう、戻れません。希望を取り戻さなくてはならないのです。
追伸
知的なものをちょっと欲しているけれども、活字を読んたり自分で考える訓練
をしてこなかった、又はその力があまりない人に、マンガは極めて有効な「入
りやすい」入り口を提供できると思います。(大学生 Hさん)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
年代が若ければ若いほど、マンガに対して肯定的であるようです。それは、
多くの良書や古典をほとんど読んでいないというところに原因があるのでしょ
うか? マンガについて、読者の意見をお聞かせください。
次回は、読者からの反響をまとめ、再びマンガについて取りあげたいと思い
ます。
___________________________________________________________________
脱藩道場 編集部 亀山信夫 葛巻岳
問い合わせ先 webmaster@dappan.org
ホームページ http://www.dappan.org/
発行 インターネットの本屋さん『まぐまぐ』http://www.mag2.com/
マガジンID 0000006881
___________________________________________________________________
|