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               日本脱藩のすすめ  第36号
                
                    ディベート

                                                       1999/05/24
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 今回のコミュニケーションシリーズは、ディベートです。


[1] ディベートとは何か

 よく深夜のテレビで、「朝までディベート!」だの「激論バトル」だのとい
った番組をやっているのを見たことがある読者が多いと思います。
 しかし、ディベートを少しでもかじったことのある読者なら、あれはディベ
ートなどと呼べる代物ではなく、単なる井戸端会議あるいは雑音・騒音に過ぎ
ないことを先刻承知のことと思います。

 試みに、ディベートの定義をランダムハウス英英辞典で調べてみますと、次
のように定義されています。

  「a contest in which the affirmative and negative sides of 
   a proposition are advocated by opposing speakers.     」
 
 この定義でピンとこない読者は、アメリカの大統領選の時に行なわれる大統
領候補同士のTVディベートを思い出して戴くといいかもしれません。
 TVディベートから想像出来るように、ディベートとは文字通り“言葉のボ
クシング”と言われる所以です。基本的に立論、尋問、反駁という順で行なわ
れるのが一般的なディベートの基本的な流れです。

 また、ことばを変えれば、ディベートとは次のようなものだと言えます。

・ディベートとは、一定のルールに則り公平に議論を戦わすものであること。
(深夜、テレビで行われる「激論云々」は、自己の正しさばかりを主張しあっ
ています。お互いが自説を唱え、自説のほうが正しいと主張しても、話は平行
線です。相手の主張が間違っていることを論理的に説明しなければなりません
。パンチだけ出したのではボクシングになりません。パンチをブロックしては
じめてボクシングとなるのです。)

・ディベートとは、第三者であるジャッジによって勝敗が決まるものであるこ
と。したがって、説得すべきは相手ではなくジャッジである。
(ルールもなく、ジャッジがいないというのが深夜に行なわれる「激論云々」
です。ルールがなければ公平な議論は不可能ですし、ジャッジがいなければ優
劣はつきません。ルールがあり、ジャッジがいるからボクシングはスポーツな
のです。ルールもなくジャッジがいなければ、ただの喧嘩です。)


[2] ディベートのすすめ

 畳水練とはよく言ったものです。野球は本を読むだけでは野球が出来ないの
と同じ理屈で、ディベートも本を読むだけでは決して身につくものではありま
せん。その意味で、出来れば一度はディベートを体験されることをお勧めしま
す。脱藩道場で推薦しているのは、下記の団体です。

【DNS】(Debate Open Space)
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kurapy/debate.html

 DNSでは、ある程度ディベートの経験が有る人を対象にしたひな形ディベ
ートが中心ですが、ディベートは全く初めてという初心者向けのセミナー(D
NS主催ではない)の案内もあります。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~kurapy/debate/lecture.html
(全国教室ディベート連盟主催:ディベート体験講座)
(JDA One-Dayディべート・セミナー)

 DNSの倉島さんの話では、ディベート未経験の方は上記のセミナーを受講
してからディベート試合に参加して戴きたいとのことでした。


[3] ディベートの効用

 ディベートを身につけることで何が得られるか。思いつくままに列挙してみ
ましょう。

●リーダーシップが身につく
 ディベートの体験を積むことで、問題を肯定側と否定側の両サイドから分析
し、統合し、幾つかの選択肢を浮き彫りにし、最終的に一つの選択肢を選ぶと
いう能力が身につきます。こうしたプロセスを通じて決定したことは、自信を
もって行動に移せることを意味し、それがリーダーシップを向上させる道にな
ります。

●説得力が身につく
 ディベートの勝敗を決めるのは、審査員です。彼らが納得のいく(説得力の
ある)ディベートができなければ、その試合は負けということになります。
 説得力は、ディベート試合の場だけではなく、実社会でも日常茶飯事に必要
となる能力です。
 また、われわれの住む日本社会は情がものをいう社会ですが、これにディベ
ートで鍛えられた説得力が加われば、情・ロジックどちらか一つというよりも
二つを兼ねものになり、より説得力が増すという結果になります。

●ルネッサンス人としての土台が固まる
 ルネッサンス人とは、西周に代表される百科全書派の人たちを指します。
 ディベートは一つの命題をめぐって、あらゆる分野の情報を追わなければな
らないため、自然、学際人間、すなわちルネッサンス人への道を歩むことにな
るわけです。

●複眼思考が身につく
 人間というものは往々にして自分が一番正しい、自分にとって良いものは他
人にとっても良いといった罠に陥りやすい生き物と言えます。しかし、ディベ
ートを一度でも体験すると、そうした一方的な思い込みだけではディベートの
試合に勝てないということを痛烈に思い知らされるはずです。
 ですから一つの命題をめぐって、肯定側・否定側の両サイドに立って徹底的
にリサーチしなければディベートの試合に勝てません。そして、そうした徹底
的なリサーチを積み重ねることによって、自分のサイドのウィークポイントも
明確になり、相手側の言い分も良く理解出来るということに繋がるわけです。
 こうした能力のことを、複眼思考と言うことが出来るのではないかと思いま
す。空気やムードに流されやすい日本人の脱藩修行者にとって、特に求められ
る能力のひとつであると言えそうです。
 
●瞬時的に分析的な返答をする能力が身につく
 ディベートでは、マッタ!は許されません。従って、敵の反論に対して即座
に反駁できないようであれば、負けということになります。
 そうしたルールのもとで鍛えられるわけですから、即座に論理的かつ分析的
な返答をする能力が自然に身についてくることになります。

●交渉力が身につく
 ディベート能力に加え、さらに経験および勘が加われば、交渉力もついてき
ます。交渉力についてはいずれ個別に取りあげていきたいと思います。

●インテリジェンスを身につける第一歩となる
 ディベートでは、己れの自己主張を支える証拠資料が欠かせません。溢れる
情報の中から、限られた時間内に本当に必要な情報を選択し、分析し、統合し
ていくという力、すなわちインテリジェンス修行の入り口に立つことが出来ま
す。


[4] インターネットでディベートは可能か

 結論から先に言ってしまうと、[1]のディベートの定義による限り、当然
インターネットによるディベートは不可能です。
 しかし、論理的思考力すなわちロジックを身につけるということであれば、
インターネットでも可能になります。
 よく英語がスラスラ書ければ、英語は話せるといわれています。逆も真なり
で、自分の言いたいことを英語で書きあらわせなければ、話せないのは当たり
前です。
 ディベート思考力(ロジック)においても同様のことが言えます。電子メー
ルあるいはメーリングリストで論理的なメールが書けないのに、実際に話す段
階になって論理的な話が出来るわけがありません。
 電子メールやメーリングリストの投稿によって得られるものは、(意識して
やれば)ディベート思考力(ロジック)以外にも次のようなものがあります。

●思考が凝縮される
 よくダラダラと話をする人がいますが、書の訓練をすればより短いことばで
端的に言いあらわせるようになります。つまり、無駄が無くなるということで
す。
 
●思考の構築に役立つ
 文章の骨組みがしっかりとしたものになるということです。普段から書いて
おり、論理の骨組みもしっかりしている人は、自然、スピーチにも強くなりま
す。

●自己に固執しなくなる
 話しているときは自己中心になりがちですが、書くということは多くの人に
自分の考えを伝えようという気持ちの方がより強くなりますので、より一層客
観性を増すことに繋がります。
 このあたりは、審査員や聴衆を意識するディベートと相通じるものがありま
す。

 以上、読者の皆さんにとって、今回のメルマガがディベート思考身につけよ
うというきっかけになれば幸いです。


 再来週も引き続きコミュニケーションシリーズをお届けします。




[追伸]

 DNSの倉島さんから以下のメッセージを戴きましたので、お知らせ致しま
す。この機会に是非ディベートにチャレンジしてください。
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 『Debate Open Space (DOS) は、ディベートトレーナーの西部直樹氏が主催
する、日本語ディベートを楽しみ/勉強するためのサークル(講習会ではあり
ません)です。ディベートの試合ができる方ならどなたでも参加いただけます
。参加メンバーは中学生から定年退職された方まで多種多様です。ただし、D
OSは、ディベートを経験したことがあり、 もっとディベートを楽しみたい
という方を対象としています。したがって、初歩的なことに対する説明はあり
ません。ディベート未経験の方は、必ず講座を受講してから、参加してくださ
い。』
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脱藩道場 編集部  亀山信夫 葛巻岳
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発行部数 602


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