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日本脱藩のすすめ 第43号
中国古典(易経)
1999/07/12
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今回の中国古典シリーズは、易経です。
姉妹メールマガジン【科学と宗教を統合する世界観】第15号の「四次元空
間の幾何学構造としての“黄金比”」(6月21日発行)で、実藤遠さんが黄
金比とフィボナッチ数列を取りあげていました。万物が黄金比に支配されてい
るという実藤さんの記述から、この世の神秘、真の姿を垣間見た思いをした読
者が多かったはずです。黄金比が大は銀河の螺旋構造から小は原子にまで影響
を及ぼしているという事実は、宇宙の意志のようなものを感じないわけにはい
きません。
そして、DNAも例外ではないのです。DNAは二重螺旋構造になっている
ことはよくご存知のことと思います。このDNAの二重螺旋も黄金比そのもの
を具現しているのですが、本体であるDNAが螺旋構造をしているだけでなく
、DNAはヒストンと呼ばれる球状の蛋白質の上を螺旋状に巻いてヌクレオソ
ームと呼ばれる構造を作り出しています。それがさらに何重もの螺旋を描いて
クロモソーム(染色体)となり、細胞の中にしまい込まれているのです。こう
した大宇宙を貫く螺旋構造の摩訶不思議さは、人間の知を遥かに超えていると
言えそうです。
さて、今回は、DNAと易経との不思議な符合の一致について筆をすすめて
いきたいと思います。
DNAと言えば、20世紀後半になって人類がようやくたどり着いた生命科
学上の大発見ですが、これを何千年も前、はるかな太古の時代に易の始祖はす
でにその存在を直感的に知っていたと言ったら、読者はどう思われるでしょう
か。DNAと易経との不思議な結びつきを発見したのが、今泉久雄(故人)さ
んです。長くなりますが、今泉説を以下に紹介致したいと思います。
● 3
DNAという螺旋の上には、四種類の塩基A、T、G、Cが並んでいます。
そして、その内の三つの塩基の組合わせで様々なアミノ酸ができるのです。つ
まり、三つの塩基の組合わせこそ生命の基本単位ということになります。例え
ば、TTTでフェニルアラニン、GCCでアラニンという具合にアミノ酸がで
きるのです。
※ 下図、「DNAの遺伝子暗号表(トリプレット)」を参照のこと。
次に、易の八卦に注目してみましょう。八卦は全て陰陽を表す爻を三本ずつ
組み合わせて、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の八つができ、易の基本構造
を成しています。
つまり、DNAと易の間で共通するキーナンバーの一つが「3」なので
す。3は太古の昔から様々な現象のはじまりを表わす神秘的な数字として捉え
られていたようです。ローレンス・ブレアも『超自然学』の中で、「3は調和
のとれた安定性を表わす。安定性はここでは意識的な動きを指し、動きとは、
すなわち機能である」と述べています。
● 64
生命の基本単位は、既述した通り、四種類の塩基から三つずつ組み合わせた
ものです。そして、全部でいくつの組合わせがあるかというと、64通りある
のです。 (4×4×4=64)
易の場合、八卦が二つ重ねられて64卦ができるのです。
ここにもDNAと易に共通した数字、「64」があります。これが、二番目
のDNAと易に共通するキーナンバーです。
DNAの遺伝子暗号表(トリプレット)
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃TTT フェニルアラニン TCT セリン TAT チロシン TGT システイン ┃
┃TTC フェニルアラニン TCC セリン TAC チロシン TGC システイン ┃
┃TTA ロイシン TCA セリン TAA 停止信号 TGA 停止 ┃
┃TTG ロイシン TCG セリン TAG 停止 TGG トリプトファン┃
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
┃CTT ロイシン CCT プロリン CAT ヒスチジン CGT アルギニン┃
┃CTC ロイシン CCC プロリン CAC ヒスチジン CGC アルギニン┃
┃CTA ロイシン CCA プロリン CAA グルタミン CGA アルギニン┃
┃CTG ロイシン CCG プロリン CAG グルタミン CGG アルギニン┃
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
┃ATT イソロイシン ACT トレオニン AAT アスパラギン AGT セリン ┃
┃ATC イソロイシン ACC トレオニン AAC アスパラギン AGC セリン ┃
┃ATA イソロイシン ACA トレオニン AAA リジン AGA アルギニン┃
┃ATG イソロイシン ACG トレオニン AAG リジン AGG アルギニン┃
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
┃GTT バリン GCT アラニン GAT アスパラギン酸 GGT グリシン┃
┃GTC バリン GCC アラニン GAC アスパラギン酸 GGC グリシン┃
┃GTA バリン GCA アラニン GAA グルタミン酸 GGA グリシン┃
┃GTG バリン GCG アラニン GAG グルタミン酸 GGG グリシン┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
● 4
爻の陽爻(―)と爻の陰爻(--)を二つずつ組み合わせると、以下の通り、
全部で八通りの組合わせが出来ます。そして、それぞれの組合わせに名前を下
記の通りにつけてみます。
※ ―と--との組み合わせは、メールでは表現できませんので、陽(―)と陰
(--)の字を使います。陽陰と書いたら、―が上、その下に--があると考
えてください。
陽陰 → 少陽
陽陽 → 老陽
陰陽 → 少陰
陰陰 → 老陰
さて、上記の四象を三つ重ねると64通りの卦、即ち64卦が出来きます。
例えば、64卦の一つ、「説」は、上から少陰・老陰・老陽の組合わせになり
ます。
では、DNAの塩基と易の四象とを対比してみましょう。
A アデニン → 少陽
T チミン → 老陽
G グアニン → 少陰
C シトシン → 老陰
すると、アミノ酸の一種であるセリンは、TCGですから、老陽(T)・老
陰(C)・少陰(G)ということになります。
このように、四象が三つ組み合わさると考えますと、DNAと易は一致
するのです。
以上までの話であれば、偶然の一致ですませることもできるでしょう。しか
し、まだ続きがあるのです。
● 2
DNAの四つの塩基には、次のような法則があります。
AはTとのみ結合する
GはCとみの結合する
これは、何の話かといいますと、螺旋階段のように伸びていくDNAの踏み
段に当たる部分は、両側の手すりから一個ずつ突き出された塩基と結合してい
ます。そして、結合する相手は決まっており、それが上記の法則の意味なので
す。ここで易の陰陽をあてはめますと、上記の法則は下記のように書き換える
ことができます。
AとG 陰(--)
TとC 陽(―)
すると易の乾から始まって、整然とDNAと八卦が対応しているのです。そ
れが下の「遺伝暗号の易学的解説」の図です。
遺伝暗号の易学的解説
─ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ─
↑ ┃ TTT (乾) TCT (乾) TAT (離) TGT (離) ┃ ↑
乾 ┃ TTC (乾) TCC (乾) TAC (離) TGC (離) ┃ 離
・ ┃ TTA (巽) TCA (巽) TAA (艮) TGA( 艮) ┃ ・
巽 ┃ TTG (巽) TCG (巽) TAG (艮) TGG( 艮) ┃ 艮
グ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ グ
ル ┃ CTT (乾) CCT (乾) CAT (離) CGT (離) ┃ ル
| ┃ CTC (乾) CCC (乾) CAC (離) CGC (離) ┃ |
プ ┃ CTA (巽) CCA (巽) CAA (艮) CGA (艮) ┃ プ
↓ ┃ CTG (巽) CCG (巽) CAG (艮) CGG (艮) ┃ ↓
─ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ ─
↑ ┃ ATT (兌) ACT (兌) AAT (震) AGT (震) ┃ ↑
兌 ┃ ATC (兌) ACC (兌) AAC (震) AGC (震) ┃ 震
・ ┃ ATA (坎) ACA (坎) AAA (坤) AGA (坤) ┃ ・
坎 ┃ ATG (坎) ACG (坎) AAG (坤) AGG (坤) ┃ 坤
グ ┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ グ
ル ┃ GTT (兌) GCT (兌) GAT (震) GGT (震) ┃ ル
| ┃ GTC (兌) GCC (兌) GAC (震) GGC (震) ┃ |
プ ┃ GTA (坎) GCA (坎) GAA (坤) GGA (坤) ┃ プ
↓ ┃ GTG (坎) GCG (坎) GAG (坤) GGG (坤) ┃ ↓
─ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ─
ここでよく注意して見ると、第一文字と第二文字とが二文字で一つのセット
になっています。そして、この最初の二文字のセットが、T、C、A、Gの順
序で第三文字に加わっているセットを一つのグループ(例:TTT、TTC、TTA、T
TG)とすると、全部で16のグループに分けられます。この16のグループを
さらにわけると次の四つのグループになるのです。
乾巽グループ
兌坎グループ
離艮グループ
震坤グループ
次に下の「先天八卦図」を見てください。メールなので線が引けませんでし
たが、左上から右下の斜線で、乾巽、兌坎、離艮、震坤のそれぞれが結ばれて
いるものと思ってください。
先天八卦図
【乾】
【兌】 【巽】
【離】 【坎】
【震】 【艮】
【坤】
次に、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤を下記のように区分します。
乾 → 陽
巽 → 陰
兌 → 陰
坎 → 陽
離 → 陰
艮 → 陽
震 → 陽
坤 → 陰
さらに、上記の区分を乾巽グループ等の四つのグループに組み直しますと、
陰陽の次のような組合わせができます。
乾巽 → 陽陰
兌坎 → 陰陽
離艮 → 陰陽
震坤 → 陽陰
● 開始と停止
繰り返しますと、DNAのテープの上に遺伝子暗号(トリプレット)、つま
り塩基であるATGCが並んでいます。そして、CTCなどのように三文字で
一つのアミノ酸になっているということを既に述べました。
さて、ここで大事なことは「どこから始まって、どこで終るのか」というこ
とが明確になっていないといけません。例えば、AGATTTCAGAGT・
・・というテープがあったとします。最初のAからはじまるものとすると、ア
ルギニン(AGA)という情報になります。AではなくGからはじまっている
ものとすると、アスパラギン酸(GAT)です。つまり、Aからはじまるのと
、Gからはじまるのとでは、まったく別のアミノ酸になってしまうということ
になります。
では、どのようにして「はじまり」をDNAは見分けているのか? それは
、開始と停止を告げる某遺伝子暗号(トリプレット)の存在が鍵になります。
下記をご覧ください。
ATG → 開始
------------------------
TAA → 停止
TAG → 停止
TGA → 停止
ATGは同時にメチオニンを表わす暗号でもあるのですが、何故か混乱せず
に「メチオニン」と「開始」とを混同することはないようです。何故、混同す
ることがないのかということは、現代科学ではわかっていません。
次に、暗号にはアミノ酸を指定しないトリプレットが三つあります。それが
、停止の信号であるTAA、TAG、TGAなのです。
さて、この「開始」と「停止」の暗号と易と何か関連かあるのでしょうか。
実は、ATGは、易でいう、「坎」に相当しているのです。
ATG → 坎
DNAで開始を表わす暗号は、易では「坎」に当たります。易経の解説書で
ある「説卦伝」で坎の象意を下記のようにいっています。
坎は陥なり
また、『海運・気楽入門』(服部龍太郎)の「白水星」で「坎」を次のよう
に解説しています。
[坎をはじめとす]----地中の陰から一陽の芽が出ようとす
るとで、ものでも作用でも始めをなすもの。数でいえば一、
色では白色。(「地中の陰から一陽の芽が出ようとするとき」
というのは、坎に該当する小成卦におけける第三爻の陰爻は
地をかたどり、第二爻の陽爻は、萌芽を象徴する、と解する)
[坎を水とす]----水は万物のはじめをなすものにて、特に
流水を指す。両岸の動かざるなかを流れる水の意で、両岸を
陰とみ、流水を陽とみたもので、止水ではない。
[坎を交わりとす]----天気下降し、地に交わりて万物を生
ずるを始めとするので、いっさいの交わる作用をいう。売り
手の陽と、買い手の陰を交わることによって取引が行なわれ
るので、取引や交際も一白水星の象とする。男女の交合も一
白である。
ここまで読めば、「ATG → 坎」は疑いの余地がありません。
------------------------
次に、「停止」はどうでしょうか。次のように、これも符合するのです。
TAA → 艮
TAG → 艮
TGA → 艮
DNAで開始を表わすコトバは、易では「艮」に当たります。易経の解説
書である「説卦伝」で坎の象意を次のようにいっています。
艮は止なり
艮は上の陽が二陰の進むをおしとどめる象だから、止む
(『易経 下巻』 高田真治・後藤基巳訳の p.295 から引用)
大分DNAと易の話が長くなりました。しかし、DNAと易以外にも、「宇
宙構造と易」、「アインシュタインの相対性理論と易」、「明在系・暗在系と
易」など、易に関して述べたいテーマは他にも沢山あるのです。しかし、キリ
がありませんのでこのあたりで止めたいと思います。
結論として、『易経』という書は、「宇宙構造の原理と変化の根本原因の解
明」の書(張錦春さん)に他なりません。そして、21世紀に相応しい易経の
研究が進展することを期待したいものです。何故なら、「易は数理哲学の一種
であり、老子哲学の真髄をビジブルにしたのが『易経』だから、幾何学として
の易をマスターすることで、『道徳経』の哲学のアナログ化を誰かがやらなけ
ればいけない」(藤原肇さん)からです。
そろそろ、『易経』は占いの書という固定概念から脱却する時期が迫ってき
ているようです。
[お知らせ]
編集部では一ヶ月近く日本を留守にします。従って、夏期のメールマガジン
【日本脱藩のすすめ】は一時休刊とさせて戴きます。次回の中国古典シリーズ
は、8月23日(月)に再開の予定です。
再開後も引き続き、ご愛読のほどお願い致します。
■参考文献
・『易経 上・下巻』(高田真治・後藤基巳訳 岩波書店)
・『易経の謎』(今泉久雄 光文社)
・『宇宙巡礼』(藤原肇・張錦春 東明社)
[特別寄稿]
東明社(出版業)の吉田寅二社長の厚意で、易経について寄稿して戴きまし
たので、別に「特別寄稿」の形でこのメールマガジン【日本脱藩のすすめ】第
43号とともにお届け致します。吉田社長は易経の大家であり、一読して得る
ものが多いはずです。この機会に是非、易の真髄にふれてみてください。
==========================訓言==========================
石に立つ矢
[いしにたつや]
『史記』(李将軍伝)
解説 必死になってやれば、いかなることも不可能では
ない。
編集部が、昨秋(1998)に長年にわたったサラリーマ
ン生活にピリオドを打った後の姿をNHKのカメラが追
いかけたことがありました。(1998年12月6日に放送)
そして、カメラ前で筆者が語った言葉の一つに、「(会
社を飛び出し)もう、後戻りは出来ません。あとは、前
に進むしかありません。」というものがありました。そ
の時脳裏をかすめたのは、標題の「石に立つ矢」であり、
「背水の陣」だったのです。
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脱藩道場 編集部 亀山信夫 葛巻岳
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