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               日本脱藩のすすめ  第48号
                
                 セマンティックス(6)

                                                       1999/09/13
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[お知らせ] セマンティックス討論会中止の件

 先々月、脱藩コミュニティを開設しましたが、その狙いは、メーリングリス
ト【脱藩道場】に参加していない、当メールマガジンの読者にもセマンティッ
クスについての活発な討論をしてもらうための、場の提供にありました。

 しかし、先々月の開設以来、脱藩コミュニティ・掲示板での発言は全くあり
ませんでした。実際は、掲示板で発言してくれた人もいたのですが、全員脱藩
MLのメンバーだったという有様です。

 その理由として、脱藩道場編集部の各メンバーが、多忙あるいは日本を留守
にしていたということもあります。また、脱藩MLという、もう一つの議論の
場があるため、セマンティックスも含む主な議論は、脱藩MLで行われていた
というところにも原因がありそうです。

 ここで、読者の発言がなかったという点について、インターネットと絡めて
少し言及しておきたいと思います。

 インターネットというのは、従来の一方通行型のメディアと異なり、双方通
行型が初めて可能になったメディアです。ですから、そうした新しい武器を利
用しない手はないのに、積極的に発言する人はごく少数であり、もっぱら受信
のみという人が圧倒的に多いのが実情です。

 日本人は受け身型の民族と言われていますが、そうした民族的特徴がインタ
ーネットの世界でも如実に現われているのは間違いなさそうです。

 しかし、世界規模での双方コミュニケーションを可能にしてくれたインター
ネットは、受信よりも発信するところに意義があるというのをご存知でしょう
か。

 先週の東京新聞(9月3日 朝刊)を読んでいたところ、インターネット上
で個人日記を公開する人が増えてるという記事に目が止りました。それにより
ますと、インターネット関連の出版社「インプレス」の調査では、インターネ
ットの利用者の17.6%がすでにホームページを開設しており、これは昨年の倍
近い数字だそうです。これに加えて33.1%の人が「いずれは持ちたい」と回答
しています。
 たとえば、「ジオシティーズ」。ここでは31万人が会員登録をしており、
その内の約7万人が日記を公開しています。
 そうした日記を公開しているという人たちの中には、日記文学と言うに値す
るだけのものを公開している人も、あるいは居るかもしれませんが、大半は自
己満足で終っているのではないでしょうか。
 自分からは積極的に発言はしないが、ひょっとしたら自分の日記を読んでく
れた人と、会話を楽しめるかもしれないといった、淡い期待を抱いた受け身型
の人が多いと新聞は報道しています。
 
 しかし、インターネットとは、自ら積極的に発信していくところにその利用
価値があるのです。

 少なくとも、このメールマガジン【日本脱藩のすすめ】の読者にだけは、受
け身型ではなく、能動型、すなわち積極型になって欲しいと思います。

 己れの思想・哲学を他人に公開し、他人の思想・哲学と衝突させ、議論を積
み重ねるという修行を通し、意見の異なる他人との統一を目指した弁証法的な
コミュニケーションのレベルに達すれば、目の前には新しい世界、フロンティ
アが開けてくるはずです。

 そのためには、セマンティックスについて学ぶ必要があり、セマンティック
スについての議論に、自ら積極的に参加するというのが第一歩となります。

 セマンティックスというテーマは、読者を「国際人」に一歩近づけてくれる
テーマであり、また読者自身が身にまとっている、「日本文化」という衣を脱
がせてくれるだけのパワーを秘めているテーマでもあるのです。この機会にセ
マンティックスに取り組んでみては如何でしょうか。

 
 今後は舞台を脱藩MLに移し、そこでセマンティックス討論会をすすめるこ
とに致します。議論に参加されることを希望される方は、下記の要領で登録の
手続をお願い致します。


★メーリングリスト【脱藩道場】への参加方法

   ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
    貴方のメールアドレスがaaa@bb.ccc.net(例)の場合、 
    (1) 本文の一行目に、join dappan aaa@bb.ccc.netと入力し
      改行してください。 
    (2) 本文の二行目に、stopと入力してください。本文には、
      著名等は入れないでください。 
    (3) 最後に、dappan-request@mx5.dns-ml.co.jp 宛てに送信
      すれば参加登録が完了です。

   ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

※メーリングリスト【脱藩道場】に関するお問い合わせ:
 webmaster@dappan.org

 セマンティックスを単なる学問として取り扱うのではなく、セマンティック
スをお互いに学び、議論を通じて実践的なセマンティックスを身につけること
に主眼を置いた、「セマンティックス討論会」は、脱藩道場・編集部の知る限
り、本邦において、初めての試みになります。真に脱藩を目指す方との切磋琢
磨となるような議論の応酬の場にしていくつもりです。読者の皆さんの積極的
な参加を期待します。


 では、再びメールマガジン【日本脱藩のすすめ】第40号の『意味論音痴が
日本を亡ぼす』に戻ることにします。
 


[4] 戦争に関する認識と国際感覚の差


    小室:契約概念やセマンティックスに関しては、日本人は外
    の世界とどうしようもなく違うのに、戦争概念に関して日本
    人は欧米人に不思議に同じで、戦争は「やるかやらないかの
    どちらか」だから、やる以上は徹底的にやるが、こんなやり
    方は欧米や日本だけと考んてもいい。アラブ、アフリカ、ア
    ジア諸国の戦争のやり方は、「やっているようでもあり、や
    らないようでもある」ということで、戦争についての考えが
    全く異なっている。一例を出すとフォークランド戦争がそれ
    で、アルゼンチンの人々はフットボールの試合が始まるから、
    戦争を一時中止してほしいと言った。こんなふざけた戦争が
    あるかと日本人はびっくり仰天した。日本だと戦争に負ける
    わ経済が破綻するわで、国を挙げて深刻にならざるを得ない
    わけだが、アルゼンチン人は負けてもちっとも困らないし、
    国家総動員の戦争や経済の概念がないから、戦争に負ければ
    再び植民地になるだけのこと。それすらないんだから、いた
    って平気。

 ここで、「戦争」ひとつとっても、概念が様々であり、国によっても違うと
いうことがわかります。口(言葉を使った議論)よりも手(殴り合い)の方が
早い日本人にとっては、アラブ流の戦争の仕方は理解し難いかもしれません。
 事実、編集部もアラブ諸国での生活の体験がないだけに、もう一歩実感が涌
かないというのが、正直なところです。
 しかし、小室さんが語った、「フォークランド戦争がそれで、アルゼンチン
の人々はフットボールの試合が始まるから、戦争を一時中止してほしいと言っ
た。」というあたり、アルゼンチン人の友人を持ち、実際にその国を訪問して
いるので、なるほど、その通りだと実感できるのです。
 また、編集部の自宅に、アルゼンチン人の友人が二回にわたり、半年ほど滞
在したことがあります。一人は、ホルヘと言い、半年間、ラテンの論理にさん
ざん振り回されたのが今では懐かしくさえ思えます。また、もう一人は、シル
ビアと言い、ホルヘが帰国した後の確か一年後に、やはり編集部の自宅で半年
間、居候していました。
 そうした人たちと共に生活をしているので、自分でやっている戦争を一時中
断し、サッカーの試合に熱中するという話は、いかにもラテン民族らしいなと
思わずにはいられません。

 その点、日本人の戦争は、小室さんの言葉を借りれば、「国を挙げて深刻に
なる」のは確かです。最近読んだ、『レイテ戦記』(大岡昇平)でもそのあた
りが窺えました。その中で、特に編集部が気になった箇所を以下に示します。


     1870年は明治三年に当り、日本陸軍創設と同時である。幕
    府のフランス心酔にかわって、普仏戦争に勝ったドイツ兵学
    が輸入される。モルトケの弟子メッケル少佐が招聘され、三
    年がかりで日本陸軍の骨幹を作った。しかし当時の新政府の
    経済では、師団編成を創り出すのが精一杯であった。それが
    そのままリモン峠に持ち越されたのである。
     むろん日本周辺には、ヨーロッパのように百万の大軍を一
    時に動かす大会戦を行う相手はいなかった。日露戦争で、シ
    ベリヤ鉄道の先端で戦うロシヤ軍に対してすら、兵力的には
    劣勢であった。従ってその作戦はドイツ譲りの劣勢包囲であ
    った。(ドイツもヨーロッパの新興国で、露仏両面作戦に勝
    つために、劣勢包囲を取らざるを得なかった。)こうして背
    伸びした戦略に伴う形式的な機動作戦。兵士の精神力への依
    存など、日本陸軍の伝統は、19世紀末の形骸化したドイツ
    兵学を基にして作られたのである。
     その弊害はすでに日露戦争の段階に現われていたのだが、
    戦勝におごって教訓を正しく受け取らなかった。支那事変の
    起こった昭和十二年までの30年間、前々進歩しなかったの
    である。
     旧日本軍隊は大元師陛下から一兵卒に到るまで統帥の一貫
    した組織であるが、それだけにすぐ諸単位は保守化し、形骸
    化する。装備の悪い中国兵を相手に中途半端な劣勢包囲を繰
    り返し、常に敵を取り逃がしていたのである。
     航空補給を持つ英軍を包囲しながら却って破られる(ビル
    マ戦線)、あるいは上陸部隊に楔をぶち込まれて殲滅出来な
    い(ニューギニア)という結果が出ていながら、同じことを
    繰り返して同じ結果を招いていたのである。
     第一師団が先頭が敵に接触するとすぐ右へ展開したのも、
    この惰性的パターンの繰り返しにすぎない。左方へは五キロ
    西北の二一八高地へ形ばかりの斥候を一度出しただけだった
    から、易々とクリフォード隊の迂回を許した。
     四十九聯隊のカポーカン、クラシアン斬込みは、こういう
    敵の作戦に対して、あまり効果は期待出来なかった。これは
    劣勢包囲と共に日本陸軍のステロタイプ化した作戦である。
    桶狭間を手本とした情念的作戦で実情に合っていなかった。
    かりにクラシアンの砲兵陣地を妨害したところで、的にはカ
    リガラ、トゥンガに砲兵がいた。四個連隊の予備がいたので
    いつまでも止まることは出来ない戦場であった。従って前線
    指揮官に逡巡が生じ、横田大隊も田村大隊も、少数の斬込隊
    を送っただけで、意外にもその戦力を温存してカブランに帰
    って来た。熱帯林中を往復する間に体力を消耗し士気を低下
    させるという結果しか得られなかったのである。
     これらはみな今日の眼から見た結果論というのは易しい。
    しかし歴史から教訓を汲み取らねば、われわれは永遠にリモ
    ン峠の段階に止まっていることになる。ただしこれは必ずし
    も旧日本陸軍の体質の問題だけではなく、明治以来背伸びし
    て、近代的植民地争奪に仲間入りした日本全体の政治的経済
    的条件の結果であった。レイテ沖海戦におけると同じく、こ
    こにも日本の歴史全体が働いていた。リモン峠で戦った第一
    師団の歩兵は、栗田艦隊の水兵と同じく、日本の歴史自身と
    戦っていたのである。
                 (『レイテ戦記』中巻 p.216)

 上記の大岡昇平の文には、様々なメッセージが込められています。

■歴史

「歴史から教訓を汲み取らねば、われわれは永遠にリモン峠の段階に止まって
いることになる」

 歴史の教訓を学ばなかった日本軍の弱点を如実に物語った言葉です。
 これは現代の日本人にも当てはまるわけであり、先輩たちの侵した失敗を繰
り返さないという意味で、名著・史書を通じ、過去の歴史を学び、未来を予測
して行動していくという訓練が必要になりそうです。
 そうした修行に効果的なのが、やはり、インテリジェンスでしょう。
 己れの頭で考え、判断し、行動していくという習慣を身につける意味で、今
回のテーマであるセマンティックスを自ら学び、時には他人と議論を積み重ね
ていくことが大切です。


■情報と戦争

 戦争は戦艦、戦車、手榴弾といったものだけが武器ではなく、情報も立派な
「武器」であることを、大岡昇平の『レイテ戦記』全体を読む中で、再認識し
た次第です。
 来年からは、インテリジェンスをテーマに筆を進めていく予定ですが、戦争
と情報というテーマは、インテリジェンス・シリーズの中で、一度は取り上げ
るつもりでいます。ご期待ください。


 再来週も引き続き、セマンティックス・シリーズをお届けします。


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  ※ 今号は、第40号の【意味論音痴が日本を亡ぼす】がベースです
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   ◆ ホームページ【日本脱藩のすすめ】 http://www.dappan.org/
   ◆ インターネットの本屋さん[まぐまぐ] http://www.mag2.com/




【編集後記】 福田 潤

 東京は、日中の陽射しもやわらぎ、秋の足音が聞こえてきそうな今日
この頃です。
 この度、私、福田も編集部に加わましたので、ご挨拶を兼ねまして、
今回の「編集後記」を担当させていただきます。

 脱藩MLでは、今後、亀山さんをリーダーに「Y2K」、 そして私が中心
になって、「セマンティクス(意味論)」の問題提起をし、皆さんと議
論/ブレインストーミングを展開していきます。 両テーマとも、日本の
破綻状況を再認識し、未来設計構想の足がかりを築くことが目的です。
メンバー間で、活発な議論が交わされ、思いもよらぬアイディアが生ま
れることを期待しております。

セマンティクスについては、その重要性とは裏腹に、日本ではその存在
すら知らない人が大勢です。脱藩MLでの問題提起では、そうした現状を
加味して、「セマンティクスとは何か?」から始まり、その重要性及び
「日本に根付かない理由」等を明確にしていく方針です。

セマンティクスは奥の深い分野ですが、難しく考える必要はありません。
最後にセマンティクスに関する引用で筆を置きます。

"Genaral Semantics helps us to understand ourselves better so 
that we can understand others better."  Karen Groshek




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脱藩道場 編集部  亀山信夫 葛巻岳 福田潤
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発行元(1) ・まぐまぐ(マガジンID 0000006881)
発行元(2) ・Macky!(マガジンID 1332)
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