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               日本脱藩のすすめ  第54号
                            
                    [試練に挑む]

                                                       2000/01/04
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[はじめに]

 西暦2000年を迎え、その記念すべき第1号として、[試練に挑む]をお
届けします。なお、今号はメーリングリスト【脱藩道場】に流した【Y2K】
緊急情報シリーズ(計6本)がベースになっています。【Y2K】緊急情報に
感心のある読者は、以下のサイトを参照願います。
http://www01.u-page.so-net.ne.jp/rb3/nobuo-km/y2k.htm

 最初に、全人類が共有した、地球規模における初の体験ともいえるY2Kと
は一体何だったのかということについて、Y2Kとペストとの関係をあぶり出
すことから振り返ってみたいと思います。



[1]Y2Kとペスト

 おそらく読者の皆さんは「Y2Kとペスト? この2つはどういう関係があ
るのだろう?」と首を傾げたものと思います。

 話の順序として、最初にペストについて簡単に説明します。

「……母親は子供を火の中に投げこんだ……」

          『ヨーロッパの黒死病』(クラウス・ベルクドルト著)

 いきなり恐ろしい文章が出てきて、唖然とした方もいるでしょう。
 実は、この短い文章の中にこそ、ペストというものの恐怖の一端が如実に示
されているのです。

 上記の文章の背景は、中世ヨーロッパのキリスト教徒によるユダヤ人に対す
る迫害シーンです。つまり、直接・間接的にペストがもたらした“現象”の一
つということになります。(ペストが流行したヨーロッパで、もっとも残酷で
あった随伴現象は、ユダヤ人に対する告訴、迫害、そして殺害でした。)



[2]ペスト
 
 ペスト(黒死病)とは、1347年から1350年にかけて中世のヨーロッパで猛威
をふるった急性伝染病であり、当時のヨーロッパ人口の3分の1の人たちが命
を落としています。

 広辞苑によれば、ペストは以下のように定義されています。

    ペスト菌の感染によって発生する急性伝染病。ペスト菌は本
    来は鼠類の病原菌で、鼠類についた蚤がペスト菌を含む血を
    吸って人間に伝播する。また、ペスト患者により皮膚・粘膜
    から伝染し、飛沫伝染もする。潜伏期は1〜7日で、突然悪
    寒を覚え、高熱を発し、頭痛・倦怠・めまいなどの症状を起
    し、皮膚は乾燥して紫黒色となり、多くは死亡する。


 それにしても、人口の3分の1がペストの犠牲になったということは、考え
てみただけでも凄まじい数字です。日本でいえば、1億2千万人の日本人の内
4千万人の人が死んだということになるからです。

 周りの人たち、自分の子供たち、夫や妻、父と母、親戚、友人らがバタバタ
と倒れていく(死んでいく)・・・。こういう時代に生きていた人びとの心の
中は、どのようなものだったのでしょうか。



[3]中世ヨーロッパ

 ペストがヨーロッパ大陸を襲った1347年から1351年にかけての当時のヨーロ
ッパはどのような時代だったのかを理解しておかないことには、当時の人びと
の心の中が分からないと言えます。紙幅がないので、以下に簡単に述べます。

 最初に、一言で当時のヨーロッパを表現するとすれば、「夜明け前」という
ことになるのではないでしょうか。それは、近代化の曙を迎えつつあった時代
であったとも言えるのです。

 『近代文化史』では、中世ヨーロッパを以下のように描写しています。

「…近代の人間を生み出した年は、1348年であり、『黒死病の』年である…」

                『近代文化史』(エゴン・フリーデル著)

 鳥瞰図的に見れば、当時の中世ヨーロッパは、生み出されてくる近代精神へ
の兆し、新たなる経済的変動と展開、社会の変革などが起こりつつあった時代
でした。そして、その後にルネッサンスが起こっています。

 ペストとは、『近代文化史』の中でフリーデルがいみじくも語っている通り、
ヨーロッパ近代化への引き金そのものになりました。
 


[4]歴史に学ぶ

 『ヨーロッパの黒死病』を著したクラウス・ベルクドルトが、その本の中で
訴えたかったものは、次のようなものでした。

    この本の中心は、極限の危機にさらされたとき人間はどうい
    う行動をとるか、また致死力の高い疫病が、文化、政治、宗
    教、家族そして社会にどんな影響を与えたかということです。
    もちろん『もし現代人がそのような大災害に直面したら、ど
    のように反応するだろうか』という無言の問いかけも含まれ
    ています。そういう意味で今日の読者は中世のこの出来事に
    ついて衝撃を受けるだけでなく、ここから未来に対する指針
    を引き出して心に留めておいて欲しいのです。

       『ヨーロッパの黒死病』(クラウス・ベルクドルト著)

 主幹(亀山)が昨年の3月に藤原肇さん(国際コメンテーター)とお会いし
たとき話題になったものの一つが、[Y2Kとペスト]でした。
 爾来、本腰を入れてY2Kの情報を追い求め、収集・分析をしてきました。
そして、その過程で出会ったのが、『ヨーロッパの黒死病』だったのです。



[5]非常事態における人間の行動

 話は中世の人たちの心の中に戻ります。

 ペストに襲われた当時の人びとの心の中はどのようであり、どのような行動
をとったのでしょうか。『ヨーロッパの黒死病』から一部抜粋しておきます。


    ペストは都市の社会構造変えた。ひとびとは不安と不信をも
    ちつつ交際した。交易と食料品の供給が脅かされただけでな
    く、友情や家族の絆も壊れていった。隣人愛、同情、思いや
    りが失われていったのである。

    ------------------------中略--------------------------

    人間の反応というものはトレントからシチリアにいたるまで
    同じであった。まさにステレオタイプ的にみえる行動パター
    ンを見ると、生命そのものを求める闘いが1348年の数カ月の
    あいだに始まったことがわかるのである。ひとびとはもはや
    名声にも社会的評価にも頓着しなくなり、目の前の目標はた
    だひとつ、生き残ることだけになった。

 この抜粋を読むだけで、ペストに襲われた当時のヨーロッパの人びとの心は
どのようなものであったかがよく分かると思います。特に最後の「目標はただ
ひとつ、生き残ることだけ」というくだりは、強烈に主幹の脳に刻みこまれま
した。極限の状態に置かれた人間の心理状態を垣間見たような気がします。



[6]悪夢ふたたび

 Y2Kは、現代のペストになりうる可能性を秘めています。

 何故か?

 それは、コンピュータによって制御されたライフラインを見ても分かる通
り、現代はコンピュータを中心にした社会であるからです。そうした社会で
は、Y2Kなどのペストがコンピュータに感染し、猛威をふるう可能性が常
に内在しています。もし、ペストのまき散らす毒にコンピュータが冒される
と、コンピュータに頼る現在の社会が麻痺状態に陥るのは、火を見るよりも
明らかです。

 幸いにして、2000年1月1日は、大きな混乱はありませんでした。し
かし、今後、姿形を変えたY2Kのようなペストが、いつ襲ってくるか分か
りません。今回のY2Kにしても、今日の仕事始めの日や400年に一度の
うるう年である2月29日など、まだ危険日が残されているので、油断は禁
物です。また、そうした危険日が過ぎた後も、新たなペストの発生に注意し
ていく必要があるのは言うまでもありません。



[7]Y2Kは、人類へのプレゼント

 ここで注意しておかなければならないことは、試練はなにもY2Kだけに限
らないということです。石油問題、環境問題、人口問題、経済問題などの試練
(問題)が目の前に山積みです。

 たとえば石油問題。実は、この問題に取り組むということは、とりもなおさ
ず地球温暖化、酸性雨による森林破壊、環境ホルモンなどの問題に取り組むと
いうことに他なりません。

 これらの試練は、人類が今のままの生活を続けていくつもりなのであれば、
近い将来に必ず直面せざるを得ない大問題です。だからこそ、人類が直面する
問題を乗り越えるには、一人一人の発想の大転換が必要になってきます。すな
わち、、生き方・考え方を変えること、脱藩のすすめです。

 このように、人びとに脱藩を考えるきっかけを与えてくれたY2K問題とは、
つまるところ「人類の進化のために用意されたラッキーな思いがけないプレゼ
ント」なのかもしれません。



[8]20世紀という時代

 ここで、あと1年で21世紀を迎えるにあたり、20世紀とはどういう時代
だったのかを振り返ってみる必要があります。
 
 一言で20世紀を総括するとすれば、「石油というエネルギ源を中心にした
技術集約型社会」であったということが言えるかと思います。そして、この技
術集約型社会も黄昏の時期を過ぎ、終焉へと向かっています。

 では、次はどのような新時代が来るのか?

 それを述べる前に、人類史の視座から、今の時代はどういう時代なのかを理
解しておく必要があります。


 
[9]三つの革命

 人類がこの地球上に誕生して以来、人類は三つの革命を体験しています。

 その三つの革命とは農業革命、産業革命そして情報革命です。そして、最後
の情報革命こそ、21世紀にその全容を現わす第三の革命です。

 現在は、技術集約型社会(産業化社会)から知識集約型社会(情報化社会)
に移行しつつある過度期にあたり、静かに文明次元での地殻変動が始まってい
ます。イギリスの産業革命以来、今日の社会を支えてきた技術集約型社会はま
もなく終焉を迎えるのです。これは、旧秩序が崩壊し、新秩序に入れかわって
いく時代に突入しているということであり、こうした大変革の時代に生まれあ
わせたのが運命だと思うほどです。

 ここでエネルギの観点から見ると、農業革命のエネルギ源が食糧だったとす
るならば、産業革命のエネルギ源は石油であったと言えます。そして、産業革
命は工業化、科学の発達といった大きな果実を人類にもたらしました。しかし、
産業革命によって人類が得たものは何も果実だけではありませんでした。



[10]光と影

 工業化、科学の発達といった産業革命がもたらしたものは、いわば光に照ら
された部分に相当します。しかし、影の部分もあることも見落とすべきではあ
りません。

 技術集約型社会(産業化社会)が人類にもたらした影の部分(ひずみ)とは
何かと言えば、環境汚染問題、エネルギ問題などであると言えます。そして、
これらの諸問題を乗り越えていかない限り、人類が新しい時代を迎えられる可
能性は無いと断言しても差支えありません。



[11]Y2Kの本質

 農業革命のエネルギ源が食糧、産業革命のエネルギ源が石油であったとすれ
ば、情報革命のエネルギ源は何でしょうか。

 それは情報です。

 ここでふたたびY2Kと情報の関連について若干述べておきます。
 
 かつての石油ショックは石油の流れ(輸入)がストップして引き起こされた
ものであり、それは石油をエネルギとした技術集約型社会がまもなく黄昏を迎
えようとしていた矢先に起こったことでした。

 同様に、現在進行形の形で進んでいる知識集約型社会のエネルギが情報であ
るが故に、情報がストップすると大パニックになります。ここにY2K問題の
本質が隠されてます。つまり、情報の流れがストップすると、コンピュータを
中心に構築された各国のインフラは麻痺状態に陥り、言わば“情報ショック”
を引き起こすことになるのです。その威力はかつての石油ショックの何倍もの
“情報ショック”になり、世界中を大パニックに陥しいれるはずです。

 

[12]インテリジェンス

 情報に話を戻します。

 最初に、日本語で情報に表す言葉には、「情報」という言葉しかないという
点に注意を向ける必要があります。

 英語の場合ですと、情報を表す語彙には、インフォメーションとインテリジ
ェンスという二つの概念に分かれます。

 日本語で言う情報あるいはインフォメーションとは、新聞を切り抜いたり、
インターネットを見たりして情報を集め、整理するといった、専ら情報という
素材を対象にしたものにすぎません。

 それに対してインテリジェンスとは、収集した素材としてのインフォメーシ
ョン(情報)を分析し、統合し、評価し、判断することです。さらに、インフ
ォメーションの評価が終わった段階で、如何にすれば最大限の効果を得られる
かといった戦略に基づき、それを実際の行動に結びつけるところまでをインテ
リジェンスは包含しているのです。

 日本の場合、残念ながら、インテリジェンスを駆使できる人材は、ほとんど
存在していません。ほとんどの人たちは、情報という素材を集める・整理する
といったレベル(インフォメーション)に留まっているのが実情です。



[おわりに]

 以上、21世紀は情報の時代になり、ますます情報、とりわけインテリジェ
ンスが重要なものになってくるということがお分かり頂けたのではないでしょ
うか。

 そうした情報をエネルギにした知識集約型社会で、日本が欧米や華僑と伍し
てやっていくためには、情報の重要性を悟り、それを活用できるレベルの人材
の育成が急務となります。それを怠るようであれば、日本凋落の運命は避け難
いものとなります。

 そこで、インテリジェンスの重要性を知り、インテリジェンスを駆使できる
人材に成長していくための切磋琢磨の場として、脱藩道場を設立したという経
緯がありました。

 読者の皆さんにおいても、新しい時代精神を身につけ、新しい時代に相応し
い人間になろうという気持ちが強いのであれば、この機会にメーリングリスト
【脱藩道場】に参加し、他の脱藩道場のメンバーと共に切磋琢磨していくこと
をお勧めします。(参加方法は、このメールの最後の方を参照願います。)

 間もなく新しい時代の幕開けです。新しい時代に向かって、これからの試練
に挑み、情報革命の大波を乗り切っていきましょう。



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脱藩道場/編集部  亀山信夫(主幹) 葛巻岳 福田潤
問い合わせ先 webmaster@dappan.org
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発行元(1) ・まぐまぐ http://www.mag2.com/
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