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               日本脱藩のすすめ  第56号
                            
                 セマンティックス(9)

                                                       2000/02/17
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[はじめに]

 読者の皆さん、こんにちは。

 さる2月6日の第4回・脱藩道場総会を無事に終え、多少は心の余裕ができ
たところで、久し振りにメールマガジン【日本脱藩のすすめ】第56号をお届
けします。今回はセマンティックス・シリーズの第9回です。ちなみに、今号
も含め、メールマガジン【日本脱藩のすすめ】で流したセマンティックス・シ
リーズは以下の通りです。


       ◆過去のセマンティックス・シリーズ◆

第56号 セマンティックス(9) 人材不足と教育システムの欠陥
第52号 セマンティックス(8) 外交知らずの日本の政治家と外交官
第50号 セマンティックス(7) まかり通る「悪質な偽訳とすり替え」
第48号 セマンティックス(6) 戦争に関する認識と国際感覚の差
第46号 セマンティックス(5) 「契約の概念」のない日本人
第44号 セマンティックス(4) 日本における「意昧論」の欠如
第42号 セマンティックス(3) セマンティックス討論会の開始
第40号 セマンティックス(2) 対談記事『意味論音痴が日本を亡ぼす』
第38号 セマンティックス(1) 国際化とはセマンティックのこと 


 今号は教育論という、セマンティックスとは一見かけ離れたテーマのように
思われるかもしれませんが、決して無関係というわけではありません。

 今回は、教育論の良書の1冊である『教育の原点を考える』(絶版)を取り
上げていますが、その本のまえがきに次のような記述があります。


     考え方を学ぶよりも結果を覚えこむという、後進国型の技
    術主義にガンジガラメになっていることが、自由な個人に育
    つべき若者たちの精神を窒息させているのだが、日本という
    枠組の中から見ている限り、突破口はおそらくみつからない
    だろう。閉ざされた世界で絶対的な威力を持って君臨する価
    値観に対して叛逆するのは、なみ大低のことではないのだ。
    だが、その枠を乗りこえて一歩外の世界に踏み出したとたん、
    このローカルな価値の基準はその意味を全く失ってしまうこ
    とが多い。そのいい例が受験地獄である。日本全体を狂気に
    追いやり、著者の青春を灰色に塗りこめている画一的な受験
    競争は、実体の核心に気づくやいなや、たちどころにその意
    味を失ってしまう。受験地獄の実体は大学に入れないことで
    はなく、志望する有名校に入るのが難しいだけであり、狂躁
    曲に踊る姿が哀れだというだけにすぎないのだ。その有名校
    が自分の人生にとって、果たしてどれだけ本質的であり、生
    きざまの充実にどこまで意味を持つかを考えたことが無いか、
    あるいは、その無関係さに気づいていないだけのことである。


 勘の鋭い読者は、主幹(亀山)が何を言わんとするのか既に気づいたのでは
ないでしょうか。

 そう、ローカルな価値基準とグローバルな価値基準の違いを知る、それこそ
がセマンティックスをモノにする第一歩となるということを、ここで主張した
いと思います。

 このように、セマンティックスとは懐の深いものであるだけに、学校教育と
いう場を出た後も、絶えず自己研鑽を積んでいかないことには、マスターはお
ぼつきません。

 ここは若い読者に期待するところ大です。



[7] 人材不足と教育システムの欠陥


    藤原:そもそも日本の大学は大学と呼ぶに値しない。 

    小室:国民学校(フォルクス・シューレ)だ。というのは大
    学であるためには教授自由移動であることが条件であるが、
    日本の大学はこの条件を満たしていない。だから、大学改革
    や教育改革についてどうしたら良いかを聞かれたら、ぼくは
    即座にこう答えることにしている。すなわち、国立、公立、
    私立を問わず公式の大学を潰して、全部を塾と予備校にした
    らいい。なにしろ、日本の大学は世界で最低のものに属して
    いるが、世界最高は自由競走がある塾と予備校だからだ。 

      セマンティックス(2)『意味論音痴が日本を亡ぼす』


 この1ヶ月間ほど、メーリングリスト【脱藩道場】(脱藩ML)において、
教育について活発な意見の応酬が交わされました。主幹(亀山)も若干意見を
述べていますが、そのあたりはinfoseekに載せた過去ログを参照して頂くとし
て、今回は『教育の原点を考える』(絶版)という本について取り上げます。

 『教育の原点を考える』は、亜紀書房から1982年に発行された本です。藤原
肇・早川聖・松崎弘文の三者によるダイアローグ型の本であり、ホームページ
【日本脱藩のすすめ】でも簡単にこの本について紹介してあります。
http://www08.u-page.so-net.ne.jp/rb3/dappan/fujiwara/books.html

 今回の執筆を機会にこの本を再読してみて、今さらのように思ったのは、こ
の本が20年近く前に出版されたものであるのにも拘わらず、内容の重要性・
新しさはいささかも衰えていないどころか、今日的な教育問題の提起書という
感すらあるということでした。

 『教育の原点を考える』は、5章からなっています。

1.生き残るための教育問題
2.学校の源流をめぐって
3.絶対主義と皇国教育
4.戦後教育の問題点
5.学問をすることと人間

 すべての章の要約を述べることは、限られた紙幅であるためできません。
よって、ここでは「人材不足と教育システムの欠陥」という視点からそのエキ
スを取り出す作業を試みたいと思います。

 今回は、主幹の教育論・教育に関するコメントは簡単に一言述べるのみにと
どめますが、主幹をはじめ、脱藩道場のメンバーの間で交わされた教育論とは
どのようなものか関心のある読者は、infoseekにあるメーリングリスト【脱藩
道場】の過去ログを参照願います。
http://www.infoseek.co.jp/Content?col=MS&arn=GWw6gDV8EQ&sv=JP&lk=

以下は、『教育の原点を考える』からの抜粋です。


    松崎:有名なことばに「教育の危機は単に教育の危機ではな
    くて、生命の危機と同じだ」という表現があります。実際に、
    個人にとっても国家にとっても、教育の在り方が、その死命
    を制しているといってもいいのじゃないか。

    早川:フィフティを引きあいに出すまでもなく、ドイツの過
    去二百年間の浮沈の原動力になったのは、教育の伝統といわ
    ざるを得ない。教育の在り方は国民性を形成するだけでなく、
    国家の運命を左右するという意味で、未来を内蔵しています。

    藤原:清沢冽の『暗黒日記』の中に、「学問というのは学校
    に行くことではなく、物を学ぼうという精神のことだ」と書
    いてある。実際名言であり、その意味では、ぼくは松崎さん
    の広義の教育について検討する方が、意義があると思う。

《コメント》
 日本では教育論というと狭義の学校教育だけが取り上げられがちです。しか
し、教育には広義の意味があることを忘れるべきではないでしょう。すなわち
人生体験から学んでいくという観点からの教育論です。人材として己れ自身を
育てていく、生涯を通じて修行をしていくという観点からの教育論も、今日の
日本において取り上げられてしかるべきではないのかと思います。


    藤原:単に外国語が喋れて何となくコミュニケーションがで
    きる、というレベルではなくて、専門知識と国際水準を抜き
    出た教養を身につけ、人格と品性において相手に尊敬の気持
    を持たせるような人材が、どうしても必要です。おそらく現
    在の日本が保持している何十倍もの量の人材が、本当は今す
    ぐにでも必要なんじゃないか。
 
    早川:何百倍も必要でしょうな。というのは、今の日本で派
    手に立ちまわっているのが、政治家や経営者だけでなく、学
    者やジャーナリストに至まで、そのほとんどが機会主義者で
    す。本当の実力を持って国際舞台で活躍しているのは、全体
    の一割にも満たない。というのが私の判断です。

《コメント》
 過去、このメールマガジン【日本脱藩のすすめ】でも取り上げた渡部昇一、
長谷川慶太郎、大前研一といった機会主義者が未だに健在であるというのは、
いかに今日の日本は人材が欠乏しているかを如実に物語っています。
 本物の人材が台頭し、そうした機会主義者を駆逐していかないことには、
日本の運命を大いに狂わせることになりかねません。


    松崎:理論からすると、国際化しない方が民族精神の保全や
    純粋な文化の保持はやり易いわけです。
 
    藤原:それに本当の意味での国際化は、ひとつの文化を完全
    にマスターした上で乗り超える行為であり、ユニバーサリズ
    ムにもとづいたインタナショナリズムだと思うんです。だか
    ら、ナショナルとしてのアイデンティティを喪失して、根無
    し草としてのコスモポリタンになるのとはわけが違う。でも、
    いまの日本には本来的な国粋主義かコスモポリタニズムが圧
    倒的といえるんじゃないかな。

《コメント》
 最近主幹は翻訳関係の某メーリングリストに「コスモポリタンでもなく、国
粋主義でもない、中道、すなわち脱藩を目指すべきだ」という旨のことを書き
ました。今後、それに対する反論が出て、議論の応酬が楽しめればと思ってい
ます。


[おわりに]

 最後に、「教育」の重要性に目覚めた読者に、以下のことばを贈ります。


     有名校や大会社という評判は、世界のレベルでは単に日本
    国内というローカルな名声にすぎず、そこに気づくことで人
    生は一転してしまう。しかも、問題は所属する組織の名前や
    肩書きではない。世界に通用する普遍的な価値基準は、個人
    としての今のパーフォーマンスと将来に向けてのポテンシア
    ルであり、すべてが人間としての生きざまと魅力にかかわっ
    ているのだ。その上、世界の次元では、まったく新しい文明
    時代が始まろうとしているのであり、新時代にふさわしい人
    材に成長することが、最優先の人生の課題になるのである。

             『教育の原点を考える』のまえがきから



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  ※ 今号は、第40号の【意味論音痴が日本を亡ぼす】がベースです
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