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               日本脱藩のすすめ  第61号
                
                  ベンチャー精神

                                                         2000/10/01
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[はじめに] 

 インターネットが普及するにつれ、だんだんと日本の産業構造に変化が訪れ
つつあるようです。今回は、編者(亀山)の本業の1つである翻訳業界で出現
した新形態の翻訳ビジネスから筆をすすめ、ベンチャー精神とは何かについて
読者の皆様と共に考えてみたいと思います。



[ベンチャー精神とは]

 IT(情報技術)が普及するにつれ、最近よく耳にする話題の一つに、流通
業の中間業者が淘汰されつつあるというものがあります。

 たとえば、鉄鋼メーカーが直接海外の顧客と取引するようになり、商社が慌
てています。そうしたことは何も商社に限らず、旅行業界やその他の業界にお
いても起こっていることであり、編者の関係する翻訳業界や出版業界もその例
外ではありません。

 先月の下旬、トランスマートという新しい翻訳ビジネスを打ち出して登場し
た会社がありました。従来は、お客から翻訳の依頼を翻訳会社が受け、さらに
翻訳会社から翻訳者に仕事が下りていく形が主でしたが、トランスマートのや
り方は、中間業者である翻訳会社を飛び越し、お客と翻訳者をウエブ上で直接
結びつけてしまうというものです。一見、トランスマートのやり方は翻訳会社
の役割のそれと似ています。違うのは、すでに述べた通り、トランスマートの
やり方は、インターネットを主体とした仲介であり、お客と翻訳者からそれぞ
れ仲介のコミッション料をもらうものです。

 また、トランスマートのやり方が画期的であると言えるもう1つの理由は、
今までは新進の翻訳者は実績が無いため仕事がもらえない、仕事が無いからい
つまで経っても実績ゼロという悪循環でしたが、それもある程度は解消される
のかもしれないという点にあります。

 このように、インターネットが普及するにつれ、ベンチャー精神に富んだ起
業家が増えてきています。ここで思うのは、果たして今度こそ本物のベンチャ
ー精神が日本にも根付くのかということです。このあたりを占うに、ベンチャ
ーとは何かについて一度振りかえる必要がありそうです。

 最初に、米国で生まれたベンチャーを、そのまま日本に移植して上手いくの
かどうか検討してみたいと思います。この日本という風土でどのようにすれば
ベンチャーが成功するのかを占うに、以下のポイントを吟味する必要がありま
す。

■1.アメリカのベンチャーとは、経済合理主義に徹した組織体としてのベン
   チャー・ビジネスであるということを理解すること。
■2.日本人の精神構造を考慮に入れ、アメリカ式ベンチャー・ビジネスとい
   う形態に多少の修正を施すこと。
■3.現在静かに進行しつつある情報革命により、急速に旧秩序が崩壊し、新
   しい秩序が芽生えつつあるという時代背景を知ること。単なるインター
   ネットの普及で世の中が便利になるといった程度の認識ではなく、人間
   のものの見方・考え方を抜本的に変えてしまうような大転換期なのだと
   いう認識を持つこと。


 次に、アメリカ式のベンチャー精神とは何かということになりますが、私の
下手な解説よりも、『日本脱藩のすすめ』(藤原肇著 東京新聞出版局)から
引用した方が早そうです。以下を参照願います。


    引用開始||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
    …ベンチャー・ビジネスは非常に経済合理主義に徹した組織
    体ですから、不要なものはいっさいかかえこみませんし、無
    駄と考えられる経費は全く使いません。事務所にしても、大
    きなビルに入って立派な看板をかける必要もありません。誰
    かメンバーが持っている会社の中の一室に陣取ったって構わ
    ないし、ホテルの会議室を3ヶ月間借りて仕事を仕上げ、目
    的を果たしたら、さっさと解散するなり、新しい組み合わせ
    で別の組織体と共同事業を始めてもいいのです。ある意味で
    課題を遂行するためのゲリラ組織ですから、特別任務が終わ
    った段階で組織は解体されて再編成されるのは当然でして、
    この解散能力がベンチャー・グループの活力原とも言えます。
    特に、労働力指向型に比べると技術志向型のものが、技術指
    向型のものに比べると知識指向性の高い組織体の方が、より
    経済合理主義に徹しており、同じベンチャー・ビジネスでも
    最新技術とノウハウを誇るものになればなるほど、情緒性は
    乏しくならざるを得ない現実があります。…

                   『日本脱藩のすすめ』p.47
    引用終り||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

 以上で、藤原さんの云う米国生まれのベンチャー・ビジネスの概要が掴めて
戴けたものと思います。

 しかし、日本の会社は解散を基本とするアメリカ式ベンチャー・ビジネスで
はありません。“情緒的”な日本人によって構成された会社の集まりであると
いう現実を見逃すわけにはいきません。

 そこで、藤原さんは、さらに次のように続けています。

    引用開始||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
    …日本人は分かれたり解散するのが苦手ですし、不要なスタ
    ッフを切り離すのは非常だという家族主義的気分が、温情の
    形で価値観の基準になっていて、みな組織の中にかかえこむ
    のがほとんどです。一度雇ったらクビは切れないし、組織が
    非生産的な人間の重みで動きがとれなくなっても、自滅寸前
    までそこにしがみついています。しかし、組織は運命共同体
    ではなく、ある課題を実現する目的で作られた乗りものにす
    ぎない以上、ビジネスをやる組織は、目的の変更によって自
    由自在に動ける状態にない限り、自らの重みで耐えかねて自
    滅ししてしまうのは世の習いではありませんかね。

                   『日本脱藩のすすめ』p.47
    引用終り||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||


 繰り返しますと、以下のようになります。

■時代が大きく変わりつつある。そうした戦国の世の中では、アメリカ式のベ
 ンチャー精神取り入れること。
■しかし、単にアメリカ式のベンチャー精神をマネするだけでいけないこと。
■日本人の精神構造も加味した、和式ベンチャー精神を取り入れること。


 時代を正確に読み抜き、ベンチャー精神溢れる新しい形態のビジネスを生み
出すことが出来れば、時代の覇者になる可能性が高まりそうです。



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編者     亀山信夫
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