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               日本脱藩のすすめ  第63号
                
                 言葉 過去と未来(2)

                                                         2000/11/01
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[3]言葉の過去

 (1) 言葉は思想

 人類の一万年の歩みにおける言葉の変遷を考えるに、キーワードの1つが、
「自然環境」であると編者(亀山)は考えます。

 しかし、自然環境と言葉について論ずる前に、自然環境に宗教あるいは思想
を結びつける作業を行いたいと思います。何故なら、編者の頭の中には「言葉
は思想である」という考えがあるからであり、言葉が思想であるならば、宗教
も思想の一形態であるからです。世界に存在する様々な宗教・思想について思
索を巡らすことは、言葉とは深い繋がりのある宗教・思想が「如何にして」、
「何の為」に発生し今日に至っても残っているのかを知る手がかりになり得る
のではと思うからです。

 最初に、自然環境の観点から宗教・思想を考察するに、2つの主なグループ
に分けられることが多いようです。すなわち、

★砂漠環境から発生した宗教・思想
 例:ユダヤ教、キリスト教、イスラム教

★森林環境から発生した宗教・思想
 例:仏教、ヒンドゥー教、神道、儒教、老荘思想など

 こうして見ると、砂漠環境から発生した宗教は例外無く啓典宗教(revealed
religion)という点で一致しているところが暗示的です。

 では、言葉について考えてみいたと思います。

 編者は、「言葉は思想である」という観点から、言葉は自然環境の影響を大
きく受け、その中で形成された思想の一形態であると思います。

 すなわち、人類が誕生し、各々の言葉が発生した。そして、自然環境が大き
く変化したことにより、民族の移動がひきおこされ、その結果として今日の諸
言語の分布になっているのではないかと思うに至っています。

 また、ここで言う自然環境の変化とは、寒冷化とともに乾燥化、すなわち砂
漠化を指し、そうした砂漠環境の中からユダヤ教などの啓典宗教が誕生してい
る点に注目する必要があります。今回のテーマと外れますのでこれ以上は宗教
について言及しませんが、啓典宗教のひとつであるキリスト教は今日の世界を
動かしており、キリスト教徒であろうとなかろうと、キリスト教そのものへの
理解が不可欠であるという点をここで強調しておきたいと思います。今日の世
界に影響をもたらしているキリスト教については、機会があればいずれ取り上
げたいと思います。


 (2) 自然環境

 次に、過去一万年の間に自然環境はどのように変化してきたのか、確認して
おきましょう。

■10000年前 6万年続いたウルム氷河期が終わる 

■8000〜5000年前 高温時代(ヒプシサマール期)

■5000年前 寒冷化始まる
 ⇒ 寒冷化・乾燥化に伴う民族大移動が始まる。
   【例】:5000年前ころからサハラ地方の乾燥化 → ナイル川への移動
       → 古代エジプト文明の始まり

■5000〜3000年前 寒冷期
 ⇒ 寒冷化および乾燥化による民族大移動がひきおこされ、今日見られる大
   言語群の存在・分布が形成された時期。
   特に、3500年前の前後は、過去一万年の間でもっとも自然環境の変化の
   激しかった時期であり、古代四大文明が崩壊している。「3500年前の危
   機」とも呼ばれている。


 (3) 言葉

 次に、環境変化に合わせ、言葉がどのように分布していったのか、確認して
みたいと思います。

●インド・ヨーロッパ語族
 印欧祖語の話されていたのは6000〜4500年前である。3500年前ころの寒冷化
 により、民族の大移動が起こり、それによってインド・ヨーロッパ語族が枝
 分かれした。この語族は、東はインドから西はヨーロッパのほぼ全域に及ぶ
 広い地域に広がっている。

●ハム・セム語族
 主にアフリカの北部に分布していた語族。8000〜7000年前あたり、ハム語族
 とセム語族共通の祖先語が存在していた可能性がある。3500年前ころにハム
 ・セム語族の民族大移動が起こり、ハム・セム語族の枝分かれの主因となっ
 た。原因はサハラ地域の砂漠化であった。その後、アラビア語などが誕生し
 ている。

●マライ・ポリネシア語族
 アフリカの東にあるマダガスカル島からインド洋を横断し、太平洋に入り、
 イースター島やハワイ諸島までに及ぶ、広い範囲にわたって分布している語
 族。 マダガスカル島からハワイまで17000キロであり、赤道のほぼ半分の距
 離である。5000年前に始まった寒冷化がユーラシア大陸の東部で民族の南下
 をひきおこし、そうした民族の南下の圧力によってマライ・ポリネシア語族
 を話す人々を海に追い出したのであった。主な言語にインドネシア語、マレ
 ーシア語、タガログ語、ベトナム語などがある。

●アメリカ大陸の語族
 南アメリカの場合、トゥピ語族という大きな語族の諸語が分布している。
 このトゥピ語族が祖語にあたる他の語族から枝分かれしたのが、3200年前あ
 たりという説がある。やはり、気候の変化により、アマゾン川周辺のサバン
 ナ化が進んだことによる民族大移動があったという説が主流。
 北アメリカの場合、インディアンの使うアサパスカ語族などの他、エスキモ
 ーの使うエスキモー・アレウト語族がある。やはり、寒冷化と乾燥化による
 民族の大移動が3500年前をピークに確認されているようだ。

●ウラル・アルタイ語族
 ユーラシア大陸の北半を占める語族。ウラル語族とアルタイ語族との関係を
 否定している見方もあれば、ウラル・アルタイ、さらにインド・ヨーロッパ
 語族の祖語が8000年ほど前にあったという説もある。いずれにせよ、ウラル
 ・アルタイ語族も4000〜3000年前にかけて寒冷化と乾燥化による民族大移動
 があったことが確認されている。
 主な言語に、ウラル語族ではハンガリー語、アルタイ語族ではトルコ語があ
 る。
 
●シナ・チベット語族
 西はインドのカシミールから、チベット、中国大陸を経て、東は台湾まで、
 北は中央アジア、南は東南アジアにわたる広い地域に分布する。この語族は
 さらにシナ・タイ語派とチベット・ビルマ語派に大別される。3500年前の急
 激な寒冷化により、北方民族の南下大移動がひきおこされた。それが、上記
 の「マライ・ポリネシア語族を話す人々を海に追い出した」ことにもつなが
 っている。


 以上、自然環境から見た、言葉の過去を駆け足で振り返ってみました。次回
は、[言葉 過去と未来](最終回)をお届けする予定です。最終回では、「
言葉と未来」を取り上げ、人類が使う未来の言葉はどのようなものになるのか
について述べ、最後に、再び広大な宇宙の話に戻り、人類は何処にいくのかに
ついて筆を進めてみる予定です。



【参考文献】

・『宇宙巡礼』 藤原肇・張錦春共著 東明社
・『気候の変化が言葉をかえた』 鈴木秀夫著 日本放送出版会
・『虚妄からの脱出』 藤原肇著 東明社
・『日本語はどのようにつくられたか』 安本美典監著 福武書店
・『大日本百科事典』 小学館


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編者     亀山信夫
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