**********************************************************************

               日本脱藩のすすめ  第69号
                
             歴史の転換点[米国テロ事件]

                                                         2001/09/20
**********************************************************************
                       



 現在、メーリングリスト【藤原肇】(藤原ML)において、今回の米国テロ
事件を巡って活発な情報交換および議論の応酬が交わされていますが、事件の
重大性を鑑み、藤原MLメンバーを代表して金子純一さんの投稿を以下に掲載
致します。

 多くの読者の皆様からのご意見をお待ち致します。



■■■ 歴史の転換点[米国テロ事件]
■■■ 
■■■ 金子純一

 はじめに、テロの犠牲になった無辜の市民に深い哀悼の意を捧げたい。

 今回米国で発生した惨事は、歴史の転換点である。歴史の転換点に立って問
題を多角的に考える必要に迫られたとき、その先が見えるかどうかは、懐疑の
心を抱いて過去の歴史を旅した経験がどの程度あるかによって決まろう。

 勿論、世界史を旅する時に、国民国家間のせめぎあいだけに視線を当てて物
を考えるのでは不充分であり、見えないものを見抜く眼力と文明のレベルから
見る視点を培う努力が必要であり、また、危機と新しい秩序は「鶏と卵の関係」
にあることを自然に認識できる精神的な柔軟性も重要となる。日暮れて道遠し
であり、自戒反省することしきりである。

 さて、手近なところでは、世界史上の大きな出来事は第二次世界大戦だが、
この危機を乗り切って連合国側が結果として打ち立てたものは何だったのかを
知り考えることは重要である。 それは、西欧の歴史を踏まえて、米国誕生・
発展の歴史と背景の繋がりを洞察し、欧米系を中心とする複数の世界的金融資
本や軍産複合体にとって、第二次世界大戦の目的は何だったのかを問い掛けつ
つ歴史の旅をすることに他ならない。

 大戦中の混乱を背景に、ヨーロッパに退蔵されていた大量の金塊が米国フォ
ートノックスの地下に大移動し、戦後世界の覇権は戦災を受けたヨーロッパか
ら無傷の米国へ本格的に移行した。そして、戦後復興援助等を通じてドルが世
界に配布され、米国が戦略的に中東を押さえて石油とドルのリンクを強固にし、
かつ最大の米国市場を世界に開放することで、ドル基軸通貨体制が確立され、
軍事力と経済・通貨を押さえた米国は世界的覇権国の地位を固めて行った。

 この延長上で、ベトナム戦争という危機の中で、金ドル兌換停止・変動相場
制への移行により、ドルは金という歯止めを完全に取り外され、米国は打ち出
の小槌を好きなだけ振ってドルを生みだす自由を得、かつ金が流出する心配を
しなくて済むという特権的な立場を確立した。

 さらに、第二次大戦後の世界で画期的であったことは、コンピュータと通信
の発達を背景に、政府の信用創造規制の及ばないオフショア市場ネットワーク
が世界中で拡大され、銀行間与信創造のマジックを使った本格的な銀行主義の
復活が行われ、かつデリバティブ等の金融取引市場が拡大し、さらに発展途上
国開発というテーマにより莫大な貸付け(信用創造)機会が創出され、グロー
バル・マネー急増の時代となったことだ。

 このグローバル・マネー急増の過程で、ドル建ての債権・債務関係が巨大化
し、巨額の債務を抱える国々のデフォルトの可能性や、ドルの威信低下という
現象が生じている。そして、ヨーロッパ勢はドルの命運とヘゲモニー確保を睨
んでユーロを発足させ、新基軸通貨と巨大欧州市場を設けて、自分の運命を自
分でコントロールする足場を創造する段階に至った。


 私は現代西洋文明を否定するものでは全くなく、その文明を人類の歴史の帰
結として肯定し、大いなる敬意とある種の諦念とを併せ持って受け入れ、さら
により良いものにすることにいくばくかでも資することができたらと願う在野
の凡夫に過ぎないが、上記の歴史理解を踏まえて、最近の読書経験や各種情報
を総合して現在どういうヴィジョンを得ているかについて記し、皆さんのご意
見・ご見解を伺うよすがとしたいと思う。


 まず、ルーズベルトが日本海軍のパールハーバー攻撃を知りながらあえて阻
止せず、モンロー主義的傾向の強い米国民を枢軸国への怒りに燃え立たせて、
米国をヨーロッパ戦線へ参加させることに成功したことは、Robert B. Stinnett 
の「Day of Deceit」(Touchstone社)に詳しい。

 また、以前の投稿の中でご紹介したリチャード・ヴェルナーは「Prices of
the Yen(円の支配者)」 で、主に日本の金融・経済のことを書いているが、そ
の真の狙いは現在の世界の金融・社会システムそのものに対する問題提起であ
り、信用創造を握る世界の中央銀行家達をデモクラシーの監督下に置くべきで
あるという主張にある。

 このリチャード・ヴェルナーの愁眉は、香港で開かれたIMF総会後のパー
ティ席上で著者本人がグリーンスパンと対面した時のエピソードである。この
体験を踏まえて、著者はグリーンスパンが米国での巨大なバブル生成に関して
完全な確信犯であること、おそらく大規模な危機の後に新しい世界の金融秩序
を作ることを考えているだろうということを鋭く告発している。

 これら2冊の内容にさらに下記のような最近の情報を重ねて見る。

 ブッシュ政権は湾岸戦争時の大物経験者を揃えた布陣で発足しており、また
今年に入って、映画「パールハーバー」も鳴り物入りで封切られ、大衆に対し
卑劣な攻撃に対してどう反応するのがPolitically Correctなのかという条件付
けがきちんと布石されている。

 また、シャロン政権誕生後、イスラエル・パレスチナ間のテンションは高ま
るばかりであり、7月10日にはイラクがイスラエルと国境を接するヨルダン
に正規軍2000名を入れ、イスラエルも7月20日より海外の主要9都市で
ユダヤ人の予備兵の募集を始めている等々。

 出てくるインプリケーションは、やはり、大きな危機を経て、エネルギー確
保のフレームワーク変更と基軸通貨に関するパラダイム転換の2点が起きるの
ではないかということである。

 そしてそこに、今回の米国内での大規模テロである。

 今回のWTCとPentagonへのハリウッド映画を上回る完璧な演出と周到なシナリ
オによるテロは、誰がやったか、誰がやらせたかということはさておいて、以
下の結果を招いた。

 すなわち今回のテロは、1)米国民をショックに陥れ、その自信を完膚なきま
でに打ちのめし、2)資本主義経済・金融システムに対する巨大な危機を招致し
たが、その反動として、3)中東での本格的軍事行動に対して米国民を立ち上が
らせ、かつ米国が世界の主要国から中東での軍事行動への了承・協力を取得さ
せることになったのである。

 ただ米国株・ドル・債権が暴落して金融恐慌が起きるだけでは、米国が中東
で戦争する大義名分を得ることは出来ない。その意味では、誰がやったにせよ
今回のテロ行為が歴史の上で持つ意味は大きく、明らかに我々は戦争の時代に
入ったのである。

 ハリウッド映画で作品をヒットさせる秘訣は、冒頭から最初の10分間にか
けて、出来るだけ派手なアクションシーンをぶつけて観客をしっかりと映画の
世界に引き込むことだそうだ。

 すぐ次には米国市場が開いたときに何が起きるかという問題が控えている。
米国市場が閉まっていて他の市場が開いていて急落した間にヘッジに障害が出
た米国のデリバティブ保有者がどうなっていくか、また米国人をはじめとした
世界の市場参加者がどういう投資行動に出るかである。 

 その次は、米国がテロ集団とそれを支援する国家への報復行動に出たとき及
び、イラクとイスラエルの間に戦争が起きたときの中東諸国・中国・ソビエト
の反応の問題がある。

私の見方は、イスラエルやイラク、タリバンやヴィンラディンは大小あっても
いずれも脇役か駒に過ぎず、究極的な主役は、米国財界の利益であり、エネル
ギー&基軸通貨の問題であるというものであり、過去の変動期の例から見て、
それらの重要問題が落ち着く点を目指して今後事態は急速に多次元展開してい
くと考えるものである。

金子純一 拝



___________________________________________________________________
執筆人  金子純一
編集人  亀山信夫
連絡先  dappan@rb3.so-net.ne.jp
URL  http://www08.u-page.so-net.ne.jp/rb3/dappan/
読者数  1136名
___________________________________________________________________

メーリングリスト【藤原肇】
http://www08.u-page.so-net.ne.jp/rb3/dappan/fujiwara/mailing_list.html


藤原肇博士の新著
『夜明け前の朝日』鹿砦社
http://www08.u-page.so-net.ne.jp/rb3/dappan/fujiwara/books/asahi02.html


配信の中止、アドレス変更、新規購読は、以下のURLでお願いします。
□まぐまぐ  http://www.mag2.com/m/0000006881.htm
□Pubzine   http://www.pubzine.com/pubzy/tool/srchid.asp?keyword2=2268
□ Melma!   http://www.melma.com/mag/31/m00019631/index_bn.html
□ Macky!   http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=1332


====================================================================PR==
          ★★ 異文化ビジネスのすすめ ★★

脱藩道場では、このたび、新たにメールマガジン【異文化ビジネスのすすめ】を
発行することになりましたのでお知らせ致します。

ちなみに、メールマガジン【異文化ビジネスのすすめ】の発行は、10月1日の
予定です。メールマガジン【日本脱藩のすすめ】同様、読者の皆様のご声援のほ
どお願い申し上げます。

メールマガジン【異文化ビジネスのすすめ】の登録(無料)を希望される読者の
方は、以下のURLにて登録手続きをお願い致します。
http://homepage1.nifty.com/dappan/business/newsletter.htm
========================================================================

発行部数 まぐまぐ 907 Macky! 80 Pubzine 79 Melma! 70 1136


メールマガジン  [第68号]に戻る  [第70号]に進む