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日本脱藩のすすめ 第72号
パックス・アメリカーナ・グローバル市場資本主義文明の時代に生きる(2)
2001/11/12
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■■■ パックス・アメリカーナ・グローバル市場資本主義文明の時代に生きる (2)
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■■■ 金子純一
■4.世界政府の理想と現実 ―資本主義は拡大継続。地域自治と民主制度を基盤と
する世界政府は将来課題―
パックスアメリカーナ・グローバル帝国主義体制や世界連邦政府などという言葉を
つかうと、単純な陰謀論を好む方々が言うような、特定の人種や特定のファミリーが、
強固な中央集権型の世界政府の誕生を企図して策謀しているとか、ビック・ブラザー
による超管理社会ができるという被害妄想的なお話と一緒にされる恐れがあるので、
あらかじめ私の立場が異なることをはっきりさせておきたい。
私はべつに特定の人種やファミリーが全てにおいて極端に強いとは考えておらず、た
だ日本や日本人にナイーブな者が多い為、そういう単純な被害妄想に陥る者が増えて
おり、それは自己のインテリジェンス欠如や世間知らずの反映であると見ている。
(こういう被害妄想の治療には、広く世間を眺めて、誰とでも対話をし、自己と他者
のポジショニングをわきまえ、妥協の余地やビジネスパートナーとして組む余地を探
し、ルールに従って相手の力を上手に使うことを考えてタフに生きる力をつけるべく
国際武者修行をすることが有効である。)
また、私は、地域自治と民主制度を基盤とする世界連邦制度や国際政府制度について
は、人類文明が目指すべき理想の一つであると考え積極的に評価するものでもある。
国民国家の位置付けに関しては、現在の“Sovereign State”というポジションから
しだいに「世界的な行政システムの下部構造の一単位」として捉えられる方向に変化
していき、やがて現在の国民国家が地域的な纏まりとして世界行政の一単位として再
編されていくことが可能性として考えられる。
かつての独立国家が、世界行政府の一行政単位として、現在の連邦政府に対する州の
ような存在になり、それらが地域合併することで、しだいに世界道州制ともいうべき
枠組みの上に、民主的なプロセスにのっとった世界連邦議会や世界連邦政府というシ
ステムが構築されるのであれば、それは人類の理想の一つと言えよう。
しかし、第二文明期のグローバリゼーションの本質が帝国主義的であることを考え
るとあまり理想論ばかりに捉われて走ることはできない。
現代世界の主役の一つである「国際金融資本」及びその資本の論理に従う「巨大多国
籍企業」は、本質的には、できるだけ誰からも束縛・規制されることなく、「貿易と
投資の自由化」の枠組みの上で、世界中の自由市場を舞台に、圧倒的な資本力と情報
・知識の集積を生かして、存分に利益を追求することができ、かつ競争の結果として
達成した寡占化を容認される状態を最も望むものである。
上記を踏まえて考えてみると、英米系を中心とするエスタブリッシュメントやイン
ナーグループが、現在のパックス・アメリカーナ体制を支える米国というビークルの
スーパー・パワーに制限を加えることにもなりかねない国際政府や世界連邦政府の設
立に賛同するのは、おそらく下記の2つの場合であるといえよう。
すなわち一つは、現在覇権を握っているエスタブリッシュメントが、新しい世界シス
テムに移行した場合、現行のパックスアメリカーナシステムで享受している以上の覇
権を確保することが高い確度で予見できる場合である。もう一つは、現行のパックス
・アメリカーナシステムが、予測シナリオでカバーしきれないレベルでの爆発的崩壊
などに直面して、世界連邦制を選択するほうが、その他の選択に比較して、今まで築
き上げてきたものを失うリスクがより小さいと判断できる場合の2通りであろう。
巨大多国籍企業にとっては、「貿易と投資の自由」を全面的に認める市場開放的な
国々が増えることがもっとも望ましく、その状態を維持、強化するのに必要かつ有効
であれば、世界政府であろうとその他の枠組みであろうと支援するであろう。
しかし、世界政府の枠組みいかんでは、多数決の論理が全体を支配しかねない可能性
も高く、国際寡占体制を構成する多国籍企業にとって、帝国主義的なグローバル規模
での事業運営スタンスが制限・否定される可能性を極力排除できる見通しが立たない
限り、国民国家の上に、さらに世界連邦政府のような政治的上部構造を構築すること
には慎重となるのが自然である。
また、資本主義体制は、本質的にはお金を媒介として、社会や個人の間の貧富の差を
活力源とする社会運営システムであり、体制側にとって過度の福祉や悪平等は本来忌
避されるべきものである。
民主主義制度に基づいて明確な形で世界連邦政府を擁立するとすれば、人口において
圧倒的多数を占める発展途上国の大衆の発言権を無視する訳にもいかず、衆愚政治の
暴走を防ぐ制度的な工夫が重要であり、それは簡単なことではない。
したがって、既得権をもつ先進国側エスタブリッシュメントに取っては、米国のリバ
タリアン派や各国の保護貿易主義者による強い反発が必至で、また、途上国の数の力
への対処が難しい国際政府を発足させることを目指すより、採決システムとして多数
決を極力導入せずに、WTOのような多角的通商交渉や相互貿易協定の組み合わせ
で、実質的な影響力を使って時間をかけて不可逆的に大勢を決めていくことがより現
実的であることが見えてくる。
これらを勘案し、私は、9.11事件は、対テロリズムの世界的監視機関の誕生につ
ながる可能性は持っても、一気に国際政府の設置検討などが実施される可能性は、現
実問題として当面少ないと考えている。
■5.21世紀のグローバル市場資本主義とフィラントロピーの精神。
資本主義文明が地球規模で展開された現在では、少数の欧米系金融機関による世界
金融寡占体制とグローバルに事業展開する世界数百社の多国籍の国際寡占企業とが、
世界の政治・経済の真の主役となっている。
現在、卓越したグランドデザイン構想力・構築力と現実展開の試行錯誤の上に実現さ
れたパックスアメリカーナ体制の元で、英米系を中心とするインナーグループは世界
金融寡頭制及び国際寡占体制という形で理念と利益を分かち合う体制を築き上げてい
るようだ。
そして現在、国民国家を大きく乗り越えるスケールと影響力を兼ね備えるに至った国
際金融資本と多国籍企業群が、大規模なM&Aや企業間アライアンスにより寡占化を
強め、「パックスアメリカーナ体制に立脚したグローバル企業帝国主義」とでも言う
べき強大な覇権を世界に唱えているように見える。
世界的な多国籍企業は欧米系が中心であり、それら巨大多国籍企業のステークホル
ダー、すなわち株主(巨大金融機関及び巨大年金基金等の機関投資家、特権的富裕層
及び一般株主)、経営者、従業員等はそれぞれに強い政治的・経済的影響力・支配力
を持っているが、いうまでもなく、株主である金融資本や機関投資家の影響力が大き
い。
特に英米系金融資本は、国債や社債の格付け機関等とも緊密な関係があり、市場評価
に左右される現代国家と企業の運営方針への影響度は甚大であり、ひいては社会の成
り立ちを大きく形作る勢力となっている。
企業と社会の間の類型には、ライン型といわれるドイツや日本の制度のように、中長
期的な社会・企業双方の繁栄持続に一定の価値を置く考え方もあれば、アングロサク
ソン型といわれて英米系金融資本に代表される「資本の論理」と「市場評価」を重視
し、企業利益の最大化を短期間で目指す企業運営を求める考え方もある。
しかし、英米系インナーグループの戦略的根幹には、株式非公開のベクテルやカーギ
ル等の大企業があり、またパート-ナーシップ制の投資銀行もあり、これらが、つね
に市場を意識して近視眼的な決断を迫られる一般上場会社とは別の次元を構成してい
ることを見落としてはならないだろう。
また、市場資本主義だけでは調整しえない課題、すなわち市場資本主義のメニュー
に載らない課題も沢山あることを認識することが重要であり、特に世界的規模での「
労働からの疎外」・「貧富の差の拡大」の問題が深刻であることを認識の対象から排
除してはならないと思う。
現在、世界中でプロ・グローバリズムとアンチ・グローバリズムの摩擦が生まれてい
るが、その根幹は、市場資本主義だけでは解決できず、また一国だけでも解決できな
い「労働からの疎外」・「貧富の差の拡大」のようなグローバルな問題が深刻化して
いるからである。
市場資本主義に適応できる人は、そこから落ちこぼれた多数の人間が世界的に発生し
ており、各国政府も大競争で生き残る経済体制を作ることに必死で、不本意にも落ち
こぼれた人々へのセーフティーネットの整備や、フラストレーションをどうやって解
決するかについての体制が整っている国はごく少なく、この出来事こそがまさにグ
ローバル市場資本主義を内側から脅かす要因になっていることを知らねばならない。
今日、この問題を無視してしまうことは、社会の信頼を失うことにつながり、寡占的
な多国籍企業経営そのものを危うくすることにもつながりかねない。
昨今、日本でも擦り切れた「企業一家主義」信仰から「市場評価最大化」信仰へ転
向したにわか信者のビジネスマンが増えているようで苦笑を禁じえない。彼らは今後
日本版401Kやストックオプション及び目標管理制度の導入と、失業の懸念の増大
によって市場資本主義のもとで懸命に働くであろうが、そのなかから市場資本主義の
メニューに載らない課題に対して気配りし、フィラントロピーの精神を発揮してグロ
ーバル社会全体への貢献も忘れない名経営者を生むことができるかについては、日本
の現状を眺めたときなんとも心もとないと言わざるを得ない。
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執筆人 金子純一
編集人 亀山信夫
連絡先 dappan@rb3.so-net.ne.jp
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